「祐巳さん、ところでナイトパレードの場所取り、しなくていいの?」
 「あっ、そうだった。」

 由乃さんに言われて時計を見ると6時40分。後50分でディズニーランド最大のパレード、東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード・ドリームライツが始まってしまう。

ブゥトン、ネズミの園へ行く 第8話

 「場所はやっぱりシンデレラ城前?」
 「う〜ん、今日の混み具合では、この時間から行ったらいい場所は取れないと思う。」
 「それに後の事もあるから、もう少しシンデレラ城拠りの方がいいかもね。」

 今日は普段より混んでるみたいだからきっと場所取りで凄い事になっていると思う。でも折角のパレードだから、遠くの方から見るよりも近くで見たいよね。特にこのパレードはすぐ目の前を通るとまるで光の渦に巻き込まれているような、あの景色が魅力だもの。

 「後の事?」

 蔦子さんが言った言葉に由乃さんが疑問をもったようだけど、

 「ああ、それはまた後のお楽しみ。」

 と、蔦子さんの一言で、説明より先にとにかく場所を取ってしまおうと言う事になった。

 「さっきはウエスタンランド近くだったけど、今度はどこがいいと思う?」
 「クリスタルパレス前はどうかしら?あそこからなら、バックにシンデレラ城を見る事もできるし。」

 クリスタルパレスというのはディズニーランドにあるレストラン。志摩子さんの言う通り、あそこからならシンデレラ城も見る事ができるし、後の事を考えるとベストポジションかもしれない。

 「そうね、夕食の買い物とかにも便利だし、あそこがいいかも。」
 「それじゃあ決まり。祐巳さん、案内よろしくね。」

 そう言うと由乃さんはずんずんと先に進んでしまった。ちょっとちょっと、そっちじゃないよ。

 トゥモローランド方面に行こうとした由乃さんの腕を慌てて引っ張ってクリスタルパレス前へ。もう結構場所は取られているものの、まだ40分ほどあると言う事もあって何とか最前列を取ることが出来た。ただ、

 「シンデレラ城が背後になっちゃったね。」
 「あちら側は一杯ですものね。」

 そう、流石にみんな考える事は同じらしく、志摩子さんの言う通りクリスタルパレス側は人で一杯。とても4人分のスペースを取る場所は無さそうに見える。

 「でも、シンデレラ城をバックにというのも捨てがたいけど、やっぱり最前列がいい。それにクリスタルパレスも綺麗だし、こちら側でもいいんじゃない?」

 どうしようかと言う話になったのだけれど、今日のお姫様、由乃さんの一言でシンデレラ城より最前列を取ることになった。

 「さて、ここで後40分待つ事になるのだけれど、その間に食事を調達しない?」
 「異議なし。折角の待ち時間だし、活用しないとね。」

 蔦子さんの意見に由乃さんも同意。私も志摩子さんもその意見には賛成だったので、あいた時間で買出しに行くことになった。

 「今度は留守番は嫌よ。折角来たのだから、私も買い物に行きたい。」

 と言うお姫様の意見で、今回は志摩子さんがお留守番。私と由乃さんがペアになってメイン(話し合いの結果、お米が食べたいと言う事になったのでアドベンチャーランドのボイラールーム・バイツのライスボール(アジアン系のどんぶり物)に決定。)を買いに行き、蔦子さんがポップコーンを買ってくることになった。

 「レストランが目の前にあるのに別の物を買いに行くというのも変な感じよね。」
 「仕方ないわよ、入っていたら時間がかかってしまうし。何より、私達のお小遣いからすると、それはちょっともったいない。」
 「確かにそうよね。」

 そんなことを話しながらクリスタルパレスの真裏にあるお店へ向かったのだけれど、その途中で由乃さんがあるものに気が付いた。

 「祐巳さん、あれ!」

 由乃さんがそう言って指差した先にはナイトパレード用のグッズを売っているワゴンがあった。

 「ちょっと見ていこうよ。」
 「あっ、由乃さん。」

 猪突猛進、目の前に人参をぶら下げられた馬、どちらの表現が正しいか解らないけど、とにかくこうなったら由乃さんは止まらない。まぁ、私も見に行きたかったんだけどね。

 「綺麗ね。」

 わざと街灯からすこしはずれた所に設置されたワゴンの上は蛍光剤で光るチューブや、ボタンを押すと電飾で光るおもちゃで一杯。それがきらきら輝いて本当に綺麗。

 「祐巳さん、祐巳さん、これ、ミッキーが回るわよ。」

 そう言いながらいくつかのおもちゃをとっかえひっかえして、由乃さんは大はしゃぎ。そんな私も一緒になって色々なおもちゃで遊んだのだけどね。

 「う〜ん、折角だしどれか買って行きたいけど・・・。」
 「ちょっと高いね。」

 これだけ楽しんだのだから、どれか一つくらいはと思ったのだけれど、値段を見ると1800円とか2500円。ちょっと手が出る値段じゃないよね。

 「あっ、でもこれなら買えるんじゃない?」

 そう言って由乃さんが手に取ったのは蛍光剤で光るチューブ。確かにこれならそんなに高くないし、いいかもしれない。

 「私達だけ買うのもなんだし、志摩子さんたちにも連絡して買わない?」
 「そうね。祐巳さん、蔦子さんの携帯番号知ってる?知っているなら私、志摩子さんに掛けるから蔦子さんの方、お願いね。」

 周りが騒がしいせいか中々出なかったけど、何とか繋がって蔦子さんの方はOK。志摩子さんの方はどうやら繋がらなかったようだけど、

 「志摩子さんのことだから大丈夫よ。」

 という由乃さんの一言で(付き合いが長い由乃さんの言葉だから、大丈夫だよね。)人数分のチューブをげっと。由乃さんは早速手首にはめてご満悦な表情で、おまけに蔦子さんと志摩子さんの分の蛍光チューブを繋げて、

 「天使の輪みたいで可愛くない?」

 と言って頭にかぶっていた。由乃さん、それじゃあ本当に子供みたいだよ。

 そんなこんなで一頻りはしゃいだ後、

 「さぁ道草はこれ位にして、目的地へ行くわよ。」
 「あっ、由乃さん、待って。」

 と、あたかも寄り道したのは自分のせいではないと言わんばかりにずんずんと進んでいってしまった。

 ちょっと行列は出来ていたものの、場所がちょっと奥まった所にあるからか、他の店より比較的空いていたおかげで15分ほどでミッションクリア。みんなの好みが解らないから、辛めのライスボール二つと普通の味のライスボールを二つ、後、人数分のウーロン茶を二人で持って志摩子さんの待つクリスタルパレス前へ急いだ。

 「道草コンビ、ご到着ね。」
 「おかえりなさい。」

 あたりまえと言えばあたりまえだけど、私達が帰るとすでに蔦子さんが帰ってきていた。どうやら蔦子さんが志摩子さんにあらかじめ話をしてくれていたらしく、蛍光チューブの件もあっさり終了。

 「これ、さっきから何度も売りにきていたから、買おうかどうか私も迷っていたのよ。」

 なんて言いながら志摩子さんも早速手首につけていた。

 買ってきた物を分けて食事。どうやら辛い方がお好みなのは蔦子さんだけだったらしく、ジャンケンで負けて辛いライスボールを食べる事になったのは・・・、

 「うう、辛いよぉ。」

 はい、私です。どうしてこうもジャンケンに弱いんだろう?でも負けてしまったものは仕方が無い。誰かに代わってもらう訳にも行かないから、がんばって食べようと決めたのだけれども、

 「大丈夫?祐巳さん。辛くない?」

 と、心配してくれたのは志摩子さんだけ。由乃さんは嬉しそうにライスボールをぱくついていたし、蔦子さんに至っては、

 「祐巳さんはいい、ホントにいい。」

 なんて訳の解らない事を言いながら写真を撮ってるし。うう、こんな事ならウーロン茶ではなくジュースを買ってくるんだったよぉ。


あとがき(H17/9月21日更新)
 ちょっと遅れてしまいましたが、ブゥトンネズミの園へ行く 第8話アップしました。

 今回は本当はエレクトリカルパレードまで行くはずだったんですよ。でも、書き終わってみればこのような展開です。本当に私は話を進めるのが下手だなぁ。

 実際問題、何気ない会話と言うのが好きなため、話の流れがスムーズに行っている時は切ろうと言う気が起きないんですよね。それが原因で毎回話が長くなってしまうのですが、予定の通り進める事よりもただの日常を眺めていたいと言う気持ちがある以上、この癖はこれからも治りそうに無いです。こいつのSSはこんな物だと思って読んでやってください。

 さて、今回出てきたボイラールーム・バイツのライスボールですが、実はこれ、私のお気に入りです。本文にあるとおり、ちょっと奥まった所にあるのでお昼時に行っても比較的空いている上に、食べ物屋さんがかたまっているおかげでこの店が混んでいても他の店が空いている事があるんですよ。それに、この店の前に屋根付きの休憩スペースがあるのもポイント。夏場とかに行くと、日陰があるここは本当にいいんですよね。どんぶりだけに結構ボリュームもあるしね。

 ディズニーランドに行って中で何かを食べようと思った時は立ち寄ってみてはいかがでしょうか?ただ私は、この頃は昼食時になると一旦外に出て食べてますが。(笑)

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