優しくしないで お泊り編 後編


 

 

 カズの部屋の前に立ち、ドアをノックした。

 「ああ。いいよ」

 と返事が聞こえる。

 ドアを開けて中を見たら、カズはベッドに入って横になっているようで、布団が盛り上がっていた。

 「こっち来いよ。寒いだろ?」

 カズの声に導かれてそばまで行けば、カズは布団をめくって僕に入るよう促す。

 僕は、僕と同じく裸のままのカズの隣へ、スルリと体を滑り込ませた。

 ベッドの中は暖かくて、洗ったばかりの髪と体からはいい匂いが立ち上り、

 触れ合う肌もしっとりとして、気持ちがいい。

 僕は体を横たえ、ひとまずホッとして、小さく一つ息を吐いた。

 そうしてカズのぬくもりを感じていたら、

 「ミノ…」

 横からするりと手が伸びてくる。

 手の平が、腹を擦り、肌触りを確かめるようにして胸へと移動し、

 乳首に触れられて指先で先端を押され、その刺激で体がビクッと跳ね、二人の体が軽くぶつかり弾け合った。

 けれど、何故かそこで手が止まり、それ以上動かない。

 いつもなら、そこからすぐに忙しく動き始めるのに…

 不審に思っていると、ちょっとの間の後、声が聞こえてくる。

 「ミノ、俺なんかすげぇ興奮して…もう出そう」

 「え…」

 「ごめん。俺ばっかで悪いけど」

 カズが正直に欲望を打ち明けて体を起こし、ベッドの上で膝立ちになった。

 その動きにつられるように、視線がカズの体へと惹きつけられる。

 部活でよく鍛えられ、僕と違って筋肉と男らしさを感じるカズの体。

 その体の中心で、カズのモノは、すでに完全に勃起して、猛々しく反り返っていた。

 カズはそんなに何度も達する方じゃない。

 なのに、さっき出したばかりでもうこんなになっているなんて、

 今日は本当によっぽど興奮しているようだった。

 そこを見た後、カズと目を合わせれば、欲情の色の浮かんだ瞳が、熱っぽく要求を伝える。

 僕は、それに応えてベッドの上を這うようにしてカズに近づき、

 膨らんだカズのモノを、右手で摘まむように持って顔を寄せ、口づけをした。

 大体の男がフェラ好きなようだけど、僕が思うに、カズはフェラされるのが『大好き』だ。

 エッチをするときは、毎回必ずと言っていいくらい、咥えることを求めてくる。

 今日二度目のフェラは、水気のある場所でするさっきの湿ったフェラとは違い、

 慣れたいつも通りのそれだった。

 唇に馴染んだ皮膚の感触。

 つるりと滑らかな先端を口に含み、舌先で鈴口に触れる。

 それから、小さな孔に舌を割り込ませれば、カズの体がビクッと揺れた。

 そこに触れると、いつもカズは同様の反応を見せる。

 感じさせられてばかりいる僕が、唯一感じさせてあげられる瞬間で、

 僕はその反応を、とても嬉しく、愛しく思う。

 ゆっくりと全体を咥え込んで出し入れを始め、舌を絡めるようにしつつ、

 口をすぼめたり緩めたりして目を閉じれば、

 「ああ…気持ちいいよ」

 カズが吐息と共に呟いて、やがていつものように僕の頭を掴み、自分で好きに動かし始める。

 喉奥までグッグッと半ば無理矢理押し込まれ含まされても、僕は全然嫌じゃない。

 どころか、

 「ん…っ、んっ…」

 僕の体はどんどん感じて熱を帯びてくる。

 「ミノ、俺の美味い?」

 カズが聞いてきたけど、咥えているので返事は出来ない。

 一心不乱に奉仕し、滲み始めた先走りを舐め、夢中でそれを味わい続けることで、

 僕はその質問に答える。

 それはいつしか中毒のようになって、僕は今では、本気でカズのモノを美味しいと思うし、

 カズのモノを咥えるのがかなり好きになっていた。

 出来るなら、ずっと咥えていたい。

 カズが、頬の内側に先端をこすりつけて来る。

 頭を掴まれ激しく前後に揺さぶられるうちに、

 僕は次第に既に後ろにカズのモノが入っているような気がして来て、

 「んっ、ふっ」

 自然に眉が寄って、小さく腰を揺らしてしまう。

 体の中に入ったカズのモノに、繰り返し奥を突かれているように錯覚し、

 僕の性器は触れられてもいないのに勃ち上がり、糸引く蜜を零し始める。

 挿れられている妄想に浸っていながら、早く挿れて欲しい想いにも駆られ、

 もうとにかく体全体が、カズを猛烈に求めておかしくなりそうになる。

 「ああ、ヤバ…もうイきそう」

 カズが呟き、ほどなくして、

 「イくっ」

 と小さく告げ、僕の頭を下腹へと押しつけた。

 次の瞬間、言葉通り達して、カズは僕の口腔内に熱い精を放ち、

 僕はビュッビュッと吐き出された白濁を、一旦口の中に留め、それから一息に飲み下す。

 残りの精液もチュッと音を立てて吸い取り、ゆっくりと離れるころには、

 僕の下半身は挿れられるどころか、まだ何の刺激も受けていないのに、

 重く熱を持ってもうどうしようもない状態になっていた。

 早く、後ろにもカズのモノが欲しい。

 後ろの口にも、同じものをたっぷりと注いで、僕をいっぱいに満たして欲しい。

 体全体がズキズキと脈打って、そのことだけしか考えられなくなっていると、

 カズが体を寄せ、僕の上半身を起こして柔らかく抱きしめてきた。

 「ミノ」

 僕の名前を耳元で囁き、

 「少しだけ…ひどくしてもいい?」

 そう問いかける。

 そんなことを言われるなんて意外で、僕は風呂の時と同じく、ちょっと戸惑う。

 今日のカズは、いつになくヤる気に満ち溢れている。

 なにげに視線を部屋に彷徨わせてみて、僕はベッドの横の机の上に、ローションと、

 行為の最中に使用する、アダルトグッズと呼ばれる物が何種類か置いてあることに気づいた。

 さっきまではなかったのに、いつの間に用意したのだろう。

 カズは、どうやら試してみたいことがいろいろあるらしく、グッズのうちの一つ、

 ボールを三つ繋げたような形のバイブには見覚えがあった。

 割と大きなサイズのそのバイブに中を押し広げられる感覚が蘇ってくる。

 もう一度、あれを挿れられるのだろうか。

 そう考えたら、高揚している体の奥に、新たな疼きが生まれた。

 他にもバイブの横に小さなローターが並んで置かれている。

 一つだけでなく全部で三つもあるそれを、どんなふうに使うのか、どう攻められるのか分からないけれど、

 とにかくこれから僕は、ここに並ぶグッズでいろんなことをされるのだ。

 僕の返事を待つ間に、カズから切羽詰ったような空気が漂い始める。

 カズが先に風呂を出たのは、これらを用意するためだったのだ。

 一人で妄想しながら準備するうちに、盛り上がり過ぎて我慢できなくなり、

 始まってすぐに射精することになってしまったらしい。

 その気合いの入り様にはちょっと驚いたけれど、僕は腕の中で黙って頷き、

 抱きしめられた体の重心を、わずかにカズの側に傾けるようにした。

 カズが、僕を抱きしめる手に力を込める。

 僕は目を閉じた。

 僕はもう、隅から隅までカズの物なのだから、どう扱われようと不満になんて思わない。

 僕の了承など得る必要はなく、好きにしていいのだ。

 

 

 そして。

 

 「あっ、ああっ!」

 十数分の後、完全にスイッチが入ったらしいカズは、本当に僕を好きなようにしていた。

 ペニスに小刻みに震えるローターを括りつけて、

 それだけでもブルブルと震える刺激が強烈でどうにかなりそうなのに、両手を後ろで束ねて縛って、

 胸を突き出すような姿勢にした僕の乳首に、時々ローターも押し付ける。

 「あっ、はっ」

 その二つの突起から、交互に、そして時には同時に、気持ち良さが電流のように流れ込んで体を貫き、

 何度か繰り返されるうちに、涙が溢れてきた。

 カズを見上げると、

 「ミノ、気持ちいい?」

 かわいいものを見る目で僕を見て、また乳首にローターを押し付ける。

 硬く隆起した尖りに強く宛がわれ、

 「ん、ああっ」

 快感が、ゾクゾクと背筋を駆け抜ける。

 「カズっ、んっ、は、あっ」

 声をあげる僕にカズが顔を寄せ、唇を塞いだ。

 舌を絡められ吸われた後甘噛みされて、ふわっと気持ち良さが募る。

 深いキスに気を取られ、

 「んっ、んっ」

 カズの行為に甘えるように応えていたら、その途中で、またローターの刺激が乳首を襲った。

 「んっ!あっ、ああっ」

 僕はキスを続けられずに、声をあげ思いっきり仰け反る。

 カズが一瞬驚いたようにした後、

 「ミノ…感じ過ぎ」

 自らも呼吸を荒くし、頬を上気させて嬉しそうに言った。

 僕のモノの先端からは、さっきからずっと、タラタラと先走りの汁が溢れ続けている。

 恥ずかしいけど、止められない。

 「乳首、こんなに硬くして」

 カズが笑いながら、僕の乳首を指で弾く。

 「あっ」

 チカッとした刺激が、体を駆け抜ける。

 「こっちも先走りこんなに垂らして…。ローターも後ろもヌルヌルになってる」

 続けて呟いたカズが、伝い落ちる液を指ですくい、僕の後ろに持っていった。

 ツプリと指先が挿し入れられる。

 「んんっ」

 ゆっくりと指を沈めた後、もう一方の手でローターの取り付けられた僕のモノを握り、扱き始めた。

 「…っ、あっ、あっ、駄目、出ちゃう」

 射精感がこみ上げてきてそう告げると、カズが手を離し、後ろに入っていた指も引き抜く。

 それから、机の上のバイブに目をやり、それを取り上げた。

 「これ、覚えてるだろ?」

 と問いかけ、

 「嫌いじゃないよな」

 そう呟きつつ、ローションを塗りつける。

 たっぷりと塗し、やがてバイブがヌルヌルとテカり始めると、カズはその先端を僕の後ろに押し付けた。

 「…っ」

 僕のそこは、中こそじんじんと熱を持って熱くなっていたものの、

 大きなそれを、まだ受け入れられそうになかった。

 もう少し解して欲しいのに、カズはそのままグッと力を込めて、押しこもうとする。

 「カズ…無理」

 僕が首を振ると、優しい声が返ってくる。

 「大丈夫。入るよ。ミノなら出来る」

 断言されて口答えするわけにもいかず、前回を思い出して、なるべく力を抜くようにした。

 そうして少しずつだけど延々と刺激され続けるうちに、入口がだんだん柔らかくなってきたらしく、

 「は…ぁっ、んっ」

 先端が、僅かに入り込んで内側も刺激する。

 「ほら…蕩けてきた」

 カズが言って、まるで手伝うかのように、バイブを持っていない方の手で、すぼまりを左右に広げる。

 内壁が擦られ、

 「あっ、んんっ」

 早く欲しくなって、そこが緩んで開くところをイメージしたら、うまくいったようだった。

 「うん。上手だよ。いい感じに呑みこんでく」

 カズが誉めてくれる。

 バイブに体を開かれるのは、圧迫感があって正直苦しいけれど、

 一度入ってしまえば次第に良くなってくる。

 それに、誉められるのは単純に嬉しい。

 「ああ、もうほとんど入った」

 腕の自由を奪われ、横向きに寝かされた姿勢の僕の後ろには、

 今大きなバイブがみっちりと詰まっている。

 それをさらにグッと奥へ押し込まれ、

 「んっ」

 たっぷりとした質量を、改めて感じた。

 「ミノ、すげぇエロい」

 満足げに言いながら、カズがご褒美のように顔を寄せ、キスをくれる。

 そうして僕の手を縛った紐とペニスに括りつけたローターを外し、

 腰を後ろから掴んで引き上げ、尻を高く上げる姿勢にさせた。

 全部入ったバイブを、カズがゆっくりと少し引き抜き、また奥へと押し込む。

 「んんっ」

 カズはそれを繰り返して、僕のソコとバイブを馴染ませ、

 出し入れの幅を次第に長く、スピードを速くしていった。

 後ろの中がすごく熱くなり、体がじっとりと汗ばんでくる。

 カズが一度手を止め、バイブに付いているスイッチを入れた。

 僕の中で、バイブがうねるような動きを始める。

 「あっあっ、ああっ」

 僕が悶えるのを見て、軽くS気質のカズは、上気した顔で嬉しそうに、

 何度も出し入れを繰り返した。

 奥まで挿れる毎に、バイブを持つ手にさらに力を加える。

 僕は、気持ち良さを感じはしたものの、バイブの刺激だけでは、なかなか達せなかった。

 そのうち、見ていたカズの方が感じてきてしまったようで、

 「ああ、イきたくなってきた」

 そう言って手を止め、ちょっと考えてからバイブを引き抜いた。

 抜かれた後も、後ろが物欲しげにヒクついているのを感じる。

 カズがそこを見入るようにしつつ、またちょっと考えるようにした後、

 僕を仰向けにし、足を持ち上げてその孔に自分のモノの先端をあてがった。

 触れ合った部分から、気持ち良さが広がる。

 カズが、そのまま体重を乗せてググッと根元まで突き入れ、

 「んんっ」

 押し寄せる圧迫感と共に、快感が体を駆け抜けた。

 カズが背筋を伸ばし、

 「…ああ、気持ちいい」

 目を閉じて呟き、感触を味わうように静かになる。

 幸せそうなその表情に、

 「カズ…」

 思わず名前を呼ぶと、ゆっくり目を開けて僕を見た。

 じっと見つめてから、何も言わずに机上に視線を移し、

 並んだ中から長くて白い布を取り上げて、それを僕に?ませて頭の後ろで結ぶ。

 何をするのかと思っていると、ローターのうちの一つを再び手に持ってスイッチを入れ、

 僕の胸に近づけた。

 「ふ…っ」

 さっきの刺激を思い出して、思わず言葉にならない声をあげる。

 ローターはすぐには押し付けられず、遊ぶようにカズが、

 僕の両の乳首の前で、フワフワと浮遊させる。

 宛がわれる瞬間を思って無意識に呼吸が荒くなり、布の隙間から息を漏らす僕の耳に、

 強くなるローターのモーター音が聞こえてきた。

 スイッチを切り替えたらしく、カズの手の中で、振動の速さを増したそれが、激しく震える。

 後ろに大好きなカズのモノが入っていて幸せな状態でありながら、

 焦燥感に襲われ不安にも駆られる僕は、その動きを慌ただしく目で追いかける。

 触れそうで触れない距離まで迫るローターに、僕の呼吸はさらに乱れた。

 「欲しい?」

 「んんっ」

 「どうしようかな」

 カズが、しばらく僕を翻弄して楽しんだ後、不意に乳首にローターを当てる。

 「んっ!」

 軽くだったが、体がビクッと反応し、中が一気に熱くなり締まった。

 カズが嬉しそうにして、何度かそれを繰り返す。

 「ん…っ、ふっ!」

 ビクビクと仰け反るほどに、乳首が固く尖っていくのを、感じる。

 そうして胸への攻めを続けながら、やがてカズが、ゆるゆると腰を動かし始めた。

 抽挿で後ろがどんどん熱く気持ちよくなっていき、奥を突かれる毎に、

 塞がれた口からくぐもった喘ぎ声が漏れる。

 カズも高まった様子で呼吸を荒くして打ち付けていたが、そのうち、

 「ミノ、イって」

 と小さく呟くと、腰を一際グッと奥へ突き入れ、乳首に強くローターを押し付けた。

 「んんーっ!」

 それと同時に、体を快感が駆け抜けて頭が真っ白になり、

 僕は仰け反ってシーツに盛大に白濁を撒き散らした。

 続けてすぐにカズも弾けて、僕の中にドクドクと精を注いだ。

 

 「ミノ、かわいいよ」

 僕の中から自身を引き抜くと、ぐったりしている僕に声をかけながら、

 シーツに飛んだ精液をカズがティッシュで拭き取る。

 それが終わると、僕の口に噛ませた布を外して、顔を覗き込み、心配そうに聞いた。

 「大丈夫か?」

 かなり長いこと道具で攻められ続けた僕の体は、

 ふわふわとした感覚に包まれていて、あまり力が入らなかった。

 乳首はじんじんと痺れているし、腰も抜けたようになっている。

 カズは、やり過ぎだったかと不安になっているようだった。

 僕の体を気遣い、終わらせようとしている雰囲気を醸し出している。

 でも。

 「大丈夫…」

 僕は目を上げて、カズを見て返事をした。

 「そっか」

 頷いて、終わりにするつもりで僕を離れようとしたカズの首に、

 齧りつくようにして両手を伸ばす。

 「大丈夫だから…、カズがもっと欲しい」

 「え」

 不意を突かれたような表情をするカズに、今の僕の望みをぶつけた。

 「もう一回抱いて…中に、いっぱい…出して…」

 そうハッキリ告げ、少しの恥ずかしさから、視線を下に落とし俯く。

 疲れても構わないから、もっとカズで満たして欲しい。

 中に出される瞬間を思ったら、また体の奥が疼き始める。

 カズが、動きを止めて僕をジッと見つめた後、ふっと相好を崩した。

 「…これだからなぁ」

 困ったように笑って呟いてから、僕の足を掴んで持ち上げ、

 後ろの入口に自分のモノをあてがう。

 「いいか?激しいの行くから、覚悟しとけよ」

 カズの言葉と共に力がこもり、復活したモノが押し込まれた。

 「んんっ」

 『カズに』体を奥まで開かれ貫かれる感覚に、頭が痺れたようになる。

 最後まで挿れると、カズは嵌り具合を確かめるみたいに、グッ、グッとさらに穿ち、

 「ずっと俺だけ見てろ」

 乱れた息遣いでそんなことを言われたら、

 「…っ」

 体全体が大きな快感の波に襲われ、蕩けそうな感覚に包まれた。

 カズが一度少し引き抜いてから、それをきっかけにして出し入れを始め、

 「あっ、あっ」

 太腿を掴んでの抽挿が、少しずつ激しくなっていく。

 熱を持った下肢は、もう気持ち良さしか感じない。

 「はっ、はっ、ああ…っ、いいっ、んっ」

 カズの動きに合わせて自然に腰が揺らぎ、快感で背筋がゾクゾクとして、

 後ろがカズのモノを締め付ける。

 「ヤバ…また…あんま持ちそうにない」

 カズが言って、腰を振る速度を増した。

 「あっ、ああっ」

 パンパンと尻に深く打ち付けられ、

 「はあっ、ああっ、カズ…っ」

 募る快感に、僕の方が急激に登りつめ、あやうく達しそうになって、それを必死で堪える。

 やがて、

 「…中で、出すよ」

 カズが我慢できないという感じで告げ、押し込まれるその先端から、

 「ん…っ、出るっ」

 短い喘ぎ声といっしょに、叩きつけられるように勢いよく熱い精が吐き出されると、

 体の奥に熱と気持ち良さを感じて、

 「あ、ああ…」

 僕も続いてすぐにイった。

 僕の体は精液を放出し、後ろはカズの液を残らず吸い取ろうとするかのように、

 奥の方でカズのモノを締めつけて蠢く。

 いつまでも収縮し貪り続ける場所から、大きな快感が体中に広がっていく。

 「ミノ…気持ちいい?」

 カズに聞かれて、小さく頷く。

 「俺も。中、すっげぇ締め付けてビクビクしててムチャクチャ気持ちいい」

 カズが言いながら、僕の腰から尻にかけてを撫でるようにさする。

 それから、グッと腰を掴むと、また何度か打ち付けた。

 「あっ、あっ」

 イった後の余韻でまだ感じているそこに、改めて気持ち良さが来て、たまらなくなる。

 「俺のこと好き?」

 耳元でカズが囁き、その質問の意味を把握した途端に、後ろがキュウッと締まった。

 好きに決まっている。

 それを体が如実に伝えてしまう。

 「ミノ、ちゃんと上の口で答えて」

 僕は一瞬躊躇ったものの、またいたずらに腰を動かされたら、頭が真っ白になって、

 「あ、あ、好き…ぃっ、んっ」

 催促されるままに口にした。

 「ミノ…」

 カズが、愛しげに僕を見て、唇を塞ぐ。

 後ろをカズのモノで満たされ、口にも舌を侵入されて深く繋がったら、

 途轍もない気持ち良さが押し寄せた。

 「あ…ん…ふっ」

 キスは長くて、一体感に包まれ、このまま溶けてしまうんじゃないかという感覚に包まれる。

 

 

 カズは、エッチの時、突如現れるS気質でもって、僕を翻弄する。

 僕の体は呼応するように、それとは逆の気質を持ってカズの行為を受け入れ、喜びを感じ始める。

 

 僕は、ちゃんと足りているだろうか。

 僕は、カズの求めるに足るものだろうか。

 

 「ミノの髪、サラッサラだな」

 エッチが終わって横になっていると、カズがベッドの中で僕の髪を触り、感心したように呟いた。

 僕は、カズ以外の人に自分の容姿を誉められても何とも思わない。

 どちらかと言うと、逆に僕の何を知っているのかと、

 憤りを感じ冷めた気持ちになってしまう。

 でも、カズに誉められたときだけは別で、凄く嬉しくなって、

 どうかカズの目にいつまでも僕が綺麗に心地よく映るようにと願う。

 

 

 あの日。

 クラスのちょっとやんちゃな人たちに呼び出され、謂れのない言いがかりをつけられていた僕に、

 声をかけたのはカズだった。

 「ミノ?そんなとこで何してんだ?」

 部活の途中だったのだろう、サッカー部のユニフォームを着て、

 カズは数人の他の部員と一緒に歩いてきた。

 状況もきちんと把握していない感じでの声掛けだったが、僕の周りにいて凄んでいた人たちは、

 割り込まれたことで話を続けづらい雰囲気になって、面倒なことになるのも嫌だったのか、舌打ちして去って行った。

 それを見たカズも部員たちと離れて行き…

 

 それだけだ。

 

 ただそれだけのことなのだけど、でも、感情の乏しい僕の心に、あの出来事は少しずつ少しずつ、沁みていく。

 それは、あたかも蝕まれるかのように。

 「ミノ?」

 と問いかける声が、何度も何度も頭の中で再生される。

 カズが僕の中に、じわじわと入り込んでくる。

 

 そうして。

 僕はいつしか、自然とカズを見つめるようになっていた。

 奇跡が起こるその日まで。

 そして、それからもずっと。

 僕はカズを見つめている。

 

 

 「寝るのが惜しい気もするけど、寝るか」

 エッチが終わってしばらく、腕を回して僕の体に触れていたカズが、観念するような口調で言った。

 「これ以上は、腰がおかしくなりそうだし」

 自分の腰を押さえながら苦笑する。

 それを言うなら、僕も、もうエッチはさすがに無理な気がした。

 最後の射精は、ほとんど量が出ていなかったし、体がこれ以上ないほどの気怠さに包まれている。

 「でも、朝まで一緒にいられると思うと、なんかいいな」

 カズの言葉が、嬉しそうな色を帯びて、僕は「うん」と頷く。

 「なかなかこんな状況にはならないからな」

 「…そうだね」

 返事をしながら、本当にそうだと心から思った。

 今回のようにカズの両親がどこかへ出かけるか、僕たちが旅行にでも出かけなければ、

 二人きりでこうして夜を過ごすことは出来ない。

 他に方法がないでもないけれど、それは、今の僕たちでは実行に移すのがなかなか難しい。

 

 本格的に眠くなって来たのか、こちらを向いていたカズが、腕を解いて仰向けになった。

 その気配に、今度は僕がカズの方を向く。

 すると、目を閉じたカズが、

 「ミノ」

 名前を呼んで、僕の手に手を重ねる。

 何を言うのだろうと、耳を澄ましていたら、

 「次は、一人で勝手に進路、決めんなよ」

 眠そうな声で、でも言い聞かせるようにハッキリとそう口にした。

 「……」

 その言葉に反応できずにいるうちに、どうやら、ついに寝てしまったらしく、

 隣から小さな寝息が聞こえ始める。

 僕は、ちょっと泣きそうな気持ちになりつつ、カズの手をそっと握った。

 

 カズは、僕を導く光。僕にとって、カズだけが、明るく眩い光だ。

 

 僕の愛しい人は輝いて、僕と僕の行く先を照らしながら、

 「ミノ」

 今日も僕の名前を呼ぶ。

 

 

                                 了

                               

                                   

 

 

                               

 

2016.09.23

                                    

 

 

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