廃墟2〜トレジャー・ガーデン〜3


 

 「昨日は、付き合ってくれてありがとな」

 翌日。俺は、またヒロの家にいた。

 一昨日と同じように、ヒロはベッドの端に腰かけた俺の方を向いて、机の椅子に座っている。

 そして、やはりどう見ても散らかっているけれど、とりあえず涼しい奴の部屋で、

 「ショーゴのおかげで、ばあちゃんと会えた」

 珍しく、しおらしい態度で俺に感謝の気持ちを告げていた。

 

 俺は、奴の言葉に手を振って否定する。

 「俺のおかげ、じゃないよ。おばあさんが自分から現れただけで…

 俺が呼び寄せたってわけでもないし」

 俺はそう言ったけれど、

 「だけど、俺一人だったら、現れたことに気づきもしなかっただろ」

 ヒロは、真面目な顔でそう返してきた。

 

 「それは、そうかも知れないけど」

 俺が、とりあえず認めるのを見て、奴がスッキリした表情をする。

 そして、言おうかどうしようか少し迷う仕草をしてから、話を切り出した。

 「俺、ショーゴとしたいことがあるんだけど」

 一昨日、庭を掘る話をし始めたときと同様の雰囲気を漂わせて、そう持ちかけてくる。

 

 俺は驚き、次いで嫌な予感に襲われ、思わず顔を歪めた。

 「今度はどこ行くってんだよ」

 まさか、またそんなことを言われるとは、全く思っていなかった。

 夏休みの残りも、本当にあと少しだ。

 探検や宝探しはもういいから、普通に家で過ごしたい。

 

 幽霊に遭遇するのも、これ以上は勘弁して欲しい。

 霊感が強いと言っても、普通の人よりは、というだけで、

 普段からそんなに見ているわけじゃなく、この夏の遭遇率は、どう考えても異常だ。

 「俺、もうどこにも行きたくない」

 正直な気持ちを告げて、俺がキッパリと断ると、ヒロは苦笑した。

 

 「誰もどっか行くなんて言ってないし」

 そして、そう言った後、小さな声で、

 「…ま、いくっちゃいくのかも…」

 モゴモゴと付け加える。

 ちょっと照れているようにも見えるその表情に、俺は訝しく思ってヒロをじっと見つめた。

 ヒロは、何を言っているのだろう。

 

 分からないまま黙っていたら、

 「だいぶ前に聞いたことなんだけど…同じ学年の木下と戸田。キスしてたらしい」

 把握していない俺を置き去りに、奴がまた唐突に、関係なく思える話を切り出した。

 「……」

 ヒロから振ってくる話題としては、かなり珍しい類のもので、俺は一瞬、どうしたのかと思う。

 

 エッチな話は、たまに友達同士でしたりするけど、

 今はそんな雰囲気じゃなかったし、話にほとんど脈絡がない。

 俺はとりあえず、

 「へぇ。木下と戸田は知ってるけど…そういう仲だったんだ」

 二人の顔を思い浮かべて、その話題に応じた。

 でも、応じはしたものの、よく知ってる間柄でもないし、

 それが自分に関係あるとも思えないから大して興味も涌かない。

 

 「だけど、なんで急にそんな話?」

 それより、ヒロがそれを持ち出した理由の方が知りたくて、

 そっちの方がずっと重要で気になって、俺は問いかけた。

 すると、奴が続ける。

 「それ聞いたときは俺、男と男がそんなことするなんて、信じらんねぇーって思ってたけど」

 そこで区切り、何かを思い出すようにしてから、俺から目を逸らす。

 

 「廃墟であんなことがあって、そんな噂のことも思い出したら、

 なんか…その、ちょっと、試してみたくなってきたっつーか」

 「……」

 やっぱりすぐには話が飲み込めずに、眉間にしわを寄せつつ、どういうことなのかと考える。

 あんなこと…ってのは、例の、体を乗っ取られた経験のことだよな。

 そう思った後、今日ここに来てからの会話の流れを思い出してみた。

 

 その途中で、ふいに閃き、俺は「え」と声をあげた。

 まさか。そういうことを…俺と?

 信じられなくてヒロをじっと見つめる。

 そんなわけがないと、奴の次の言葉を待ったが、

 向こうも俺の反応を待っている体でこっちをじっと見ている。

 

 ので、思わず笑って、

 「…冗談だろ?」

 そう聞いたら、

 「本気だけど」

 と返してきて、俺は唖然とした。

 それから、もう一度、会話の流れを頭の中で再現してみる。

 

 そういえば『いくっちゃいくのかも』とか言っていた…

 あれは…ひょっとしてエッチのことだったのか…?

 でも、俺のことを好きじゃないのに、どうしてそんなことを言い出すのかが分からない。

 「だって…ヒロは俺のこと、何とも思ってないんだろ?」

 そう聞いたら、ヒロは、ちょっと強い口調になって、

 「なんで決めつけるんだよ」

 不満げな顔をした。

 

 それを見て、自分の思い込んでいたこととのズレのようなものを感じる。

 てっきりそうなのだと思っていたけれど、でもこの感じは…違うのか?

 「…告白の返事を聞かせてくれないのは、何とも思ってないからじゃないのか?」

 俺が思い切って聞くと、奴は、考えるように上目遣いをした。

 「それなんだけど…俺って、告られたのか?」

 ヒロの言葉に、驚いて、俺は思わず目を瞬かせた。

 

 「だってショーゴ、はっきり好きって言わなかったし、返事くれとも言わなかったから」

 「……」

 指摘されて、告った時のことを思い返してみた。

 確かにはっきり好きだとは言ってない。

 それに「返事くれ」とも言ってない。

 言ってないけど…

 でも、告るときに、わざわざ「返事くれ」って言うものだろうか?

 

 「そんなの、普通言わないだろ。なんにも言ってくれないから、

 俺は、振られたんだと勝手に思いこんでた」

 「俺は、振ったつもりないけど…っつうか」

 ヒロは、考えこむように黙った後、少し首を傾げつつ、

 「あれ、なんか曖昧だったし、あの時点では俺、

 ほんとうにショーゴのこと、何とも思ってなかった」

 そう言って一度口を噤んで、それから、頭に手を持って行き、

 「俺、頭悪いからよく分かんねぇんだけど…」

 珍しく謙遜してまた続けた。

 

 「あの時、ショーゴが俺のこと好きかも、って言って、それ聞いたら、

 なんか、それまで何とも思ってなかった筈なのに…

 その、だんだん俺もそんな気がして来たっていうか」

 「……」

 「あれから盆を挟んで会わない時があって、その間もどんどんそんな気がしてきて。

 それから今回ショーゴが付き合ってくれて、昨日一緒に庭掘って…」

 少し首を傾げるようにして、自分の気持ちを、いつになく慎重な口調で告げる。

 

 「そんで、廃墟でエッチしたことなんか思い出したら、その…したくなって来て…」

 そこで言葉が途切れた。

 何も言わないままヒロが俺を見てくるので、ひとしきり見つめ返した後、

 俺も浮かんだ疑問を、慎重に口にする。

 「それって、ヒロも俺のことを好きだと思っていいってことなのか?

 それとも…ただエッチを試してみたいだけ?」

 

 興味本位なら、俺はしたくなかった。

 だって、俺は真面目にヒロが好きなのだ。

 それに、後から、好きだと思ったけどやっぱ違ったとか言われたら嫌だから、

 ちょっと口調がキツくなって、詰問するような感じになってしまう。

 その俺の言い方に、ヒロが、少し困ったような顔をして、

 「だ、だから多分、俺もショーゴのこと…」

 ボソボソと言ったあと、なんかムカついたらしく、ムッとした表情をした。

 

 「な、なんだよっ。別にしなくたって、俺は全然いいんだからなっ。

 お前が、どうしてもってんなら、やらせてやらないわけでもないと思って、俺はっ」

 恥ずかしいせいなのか、ヒロが弾けるように一人で喋り始め、

 俺が面食らっていると、止まらなくなった感じで捲し立てる。

 

 「ちょっと、その、好きなんだから友達同士みたいなことばっかしてねぇで、新しい試み、っていうか…

 おい、なんだって俺にばっか喋らせんだよっ、ヤるのかヤらねぇのか、はっきり答えを聞かせろっ」

 「……」

 なんだかんだ言ってるけど、要するに、ヤりたいんだよな?俺と。

 

 なんか、信じられない。

 乱暴者で、いつも俺をこき使っているヒロが、俺としたくてテンパってるとか、マジか。

 「は、早くしろっつってんだろっ。今ヤらないならもうヤらないからなっ。

 それでもいいのか!?」

 って、言ってる割には、全く引く気が感じられないんだけど。

 

 俺が固まっていると、奴が確認するように聞いてくる。

 「お、俺のこと、好きなんだよなっ?」

 俺はヒロを見ながら、面白いようなちょっとかわいいと思うような、

 なんとも言えない気分になって、力なく笑ってから、小さく一つ息を吐き「ああ」と肯定した。

 

 「で、ヒロは何して欲しいんだよ」

 聞くと、奴が口を噤み、視線を下に落として、考えている様子を見せる。

 待っていたら、俺の唇に一度視線を走らせてから、目を逸らして、ポツリと言う。

 「…キスしろ」

 「え…キス?」

 「ああ」

 ヒロの言葉に、少し戸惑う。

 本当にいいのだろうか。

 ちょっと、怖いような気もする。

 

 「……」

 でも、これはヒロが望んでるんだよな。

 これは、許されてしてるんだよな?

 ヒロが、して欲しがってるんだよな?

 俺は、唾をゴクリと飲みこんでから、覚悟を決めて、ヒロに顔を寄せた。

 なんだか夢みたいで、何度も頭の中で確認しながら、ドキドキしながら唇を合わせる。

 

 唇にヒロの唇の感触を感じ、少し力を込めて押しつけてから、離れた。

 それと同時に、ヒロがなんか違うという表情を浮かべて俺を見る。

 「もっと本格的なやつがしたいんだけど」

 「…は?」

 「もっとこう、気持ちのいいやつ」

 

 う…。それは俗に言う、ベロチュー…?

 俺にどんな技術を求めているんだ。

 俺は、ヒロの言葉を聞いて、ふいに廃墟でのエッチを思い出した。

 そう言えば、俺に取り憑いていた聖は、エッチが上手そうだった。

 

 そんなことを考えつつ、奴がどんなふうにキスしていたか、

 記憶を辿ってみようと少しだけ考えてみて、ハタと我に返る。

 なんで聖のやり方でエッチしようとしてんだよ、俺。

 そんなの、なんか違うだろ。

 俺は、ヒロを見て念を押すように告げた。

 

 「言っとくけど、廃墟でのエッチは、俺のエッチじゃないから」

 それを聞いて、奴が真剣な顔で応える。

 「そんなの分かってるよ。俺だって違うし」

 言った後、ヒロがちょっと恥ずかしそうにし、俺は、英彦の声で喘いでいた奴の姿を思い出した。

 俺と聖が違うように、ヒロと英彦も全然違う。

 そして俺が好きなのはヒロで、今、俺は、他でもないヒロとしているのだ。

 

 自分自身でヒロを喘がせたいと思った気持ちもよみがえり、俺は思い切って少し体を寄せ、

 ヒロの二の腕を柔らかく掴んで、再び唇をヒロのそれと合わせた。

 唇の表面を食むようにした後、少し開いたところから舌を差し入れる。

 

 口をこじ開けて侵入し、ヒロの舌に触れると、奴も舌を差し出してきて、押しつけ合った。

 「んっ…」

 ヒロが鼻から声を漏らし、それが思いのほか色っぽかったので、興奮してくる。

 舌を滑らせ、そのまま上顎を舐め、舌に舌を絡めて、口の中を蹂躙するうちに、

 ヒロの様子が変わってきた。

 離れて見ると、少し熱くなっているのか、頬が上気して赤くなっている。

 

 その様子に気を取られていたら、そんなそそる顔のままで、でも強気な口調で、ヒロが言った。

 「次、乳首、舐めろ」

 「ええっ!?」

 俺は、心底ビックリして、大声をあげてしまった。

 「な、舐められたいんだ?」

 「男でも、乳首って感じるらしいから」

 「……」

 それは、どこ情報ですか?

 

 ヒロは、調べたのか元々知っていたのか、そんなことを要求してきた。

 女じゃないんだし、怒られるんじゃないかと、俺は、乳首を攻めるつもりはなかったのだけれど、

 ヒロがそう言うならと、奴のシャツの裾に手をかけて、それを上に上げた。

 乳首が見えるところまで捲り上げる。

 二つの突起が顔を見せて、俺は緊張した。

 今までだって、体育の着替えや水泳の授業などで見ていた筈なのに、

 今日はそういう時のそれとはまったく違って見える。

 

 舌を出し、恐る恐るヒロの乳首をペロッと舐めてみると、

 「…っ!」

 ビクッと奴の体が揺れる。

 「どう?…いい?」

 聞くと、

 「ん…まあ…」

 顔を背けて答える。

 

 なんか、実際の反応と返事にすっごい落差を感じるんだけど…

 と思っていたら、

 「次、吸って」

 と言われて、目を丸くする。

 どうやら先へ進めろということらしく、

 「う、うん」

 俺は、頷いたが、どうも体勢が悪いので、

 「ごめんヒロ、こっち移ろう」

 机の椅子に座っているヒロに、ベッドへ移るよう促した。

 

 奴が、ベッドの上に乗っている邪魔なものを脇へ押しのけて、黙って俺の隣に座る。

 俺は、そのままヒロをゆっくりと押し倒し、上に乗るようにして、もう一度乳首に顔を寄せた。

 そのまま唇で覆うようにして、チュッと吸ってみる。

 

 「んっ」

 ヒロが顎を上げて、思わず出てしまうらしい声を抑えるように、慌てて口に手を持って行く。

 続けて少し強めに吸い上げると、ヒロの体に力が入る。

 快感をこらえて声を押し殺し、ギュッと目を閉じている表情に、口を離して自然と見入ってしまう。

 

 上目遣いにじっと見ていたら、目を開けたヒロが、その視線に気づいて、決まり悪そうに言った。

 「なんか…変な感じ。ムズムズする」

 照れている表情で、でもちゃんと感触を伝えてくれるのがなんか嬉しくて、気持ちが盛り上がる。

 

 その言葉と表情に、見惚れてちょっと動かずにいたら、

 その後「もっと」という小さな声が聞こえてきて、そのおねだりするような感じに躊躇いつつも、

 「う、うん」

 応えて、再度胸に顔を寄せた。

 

 ……。

 それにしても。なんで俺、指示されながら攻めてるんだろうなぁ。

 そして、こんなムードのないエッチだってのに、勃起してる俺って…

 俺が、下着の中で張りつめて、切ない感じにキュンキュンしている自分のペニスを意識しながら、

 舌先を硬く尖り始めた表面に押し付け上下に動かすと、

 「んっ、あ…っは、これ、うわっ」

 ヒロは、たまらないという感じで、胸を反らした。

 

 それを何度か繰り返したら、奴の乳首が、完全に隆起してきて、

 それを舌先に感じた俺は、尚もしつこくそこを攻めた。

 「んん…っ」

 ヒロは胸を突き出し、背中を仰け反らせるようにしている。

 俺は、手をヒロの腰の辺りに持っていき、布の上からヒロの体にそっと触れた。

 

 なぞるように股間へと移動させ、その形を確かめるようにしつつ、

 上から柔らかく握ると、腰が引けるようにビクッと揺れる。

 ヒロのモノに触っているという事実にちょっと感動して、

 握ったまま手を止めていたら、奴の焦れたような不満げな声が聞こえた。

 「なんだよー、触るんならもっとちゃんと触れよ」

 

 そんなことを言われるとは思っていなかった俺は、

 「わ、分かった」

 了承して頷くのと同時に、焦って思わずギュッと握ってしまい、

 「おうふっ」

 ヒロが変な声をあげる。

 「強ぇんだよっ」

 ペシッと軽くはたかれた。

 「ごめんっ」

 謝りながら思う。

 

 ちゃんと触れっつったり、ちょっと力入れただけで文句言ったり、なかなか厄介だ。

 ふいにヒロが、交換条件のように言ってきた。

 「俺の舐めてくれたら、扱いてやってもいい」

 「……」

 なんで俺が舐めて、お前が扱くんだよ。

 と一瞬思ったが、

 「いいよ。別に扱かなくても」

 俺は、言いながらヒロのズボンのボタンを外し、ファスナーを下げた。

 

 下着も押し下げると、奴の半分勃ち上がったモノが顔を見せる。

 俺はそれに口を寄せ、躊躇することなく咥えこんだ。

 「あ…っ」

 そうして、吸い上げるようにしながら上下に口をスライドさせれば、

 「うわっ、あっあっ」

 ヒロが、驚きと気持ち良さの混ざったような声をあげる。

 

 俺は別に見返りが欲しくてエッチしてるわけじゃなく、

 ギブアンドテイクじゃなくても、全然構わない。

 俺は、ヒロを気持ち良くさせたい。

 俺に翻弄されて、乱れる姿が見れたとしたら、それだけで十分だ。

 

 愛撫を加えるうちに、ヒロのモノは硬く大きくなった。

 はっきり言って、俺のよりデカい。

 その後、フェラでイって欲しい気がして、いろんな部分を攻めてみたけど、

 ヒロはなかなか達しなくて、そのうち、

 「もういいから、早く挿れろ」

 と言い出した。

 「……」

 

 挿れろってことは、挿れられる側でいいんだろうか。

 と思い、一応ちゃんと確認を取りたくて聞いてみた。

 「あの時、痛かったんだろ?今度はヒロが挿れる?どうする?」

 すると、ヒロの中では既に決まっていた事らしく、あっけらかんと答える。

 「俺、ケツに挿れるのは無理。だって、ケツだし」

 

 俺は、それを聞いて笑った。

 その気持ちは分からないでもない。でも。

 「じゃあ、俺が挿れる」

 俺は、ヒロに挿れたい。

 俺の言うことを聞いて、ヒロは黙って俺の顔を見つめた後、俯き気味に視線を逸らした。

 反論しないところを見ると、異存はないようだ。

 

 痛かったなら、もう挿れられたくないだろうに、いいのだろうかと思ったが、

 それ以上何も聞かずに、『そこまで俺としたいと思ってくれているのだ』と、

 いいふうに考えることにする。

 下半身が疼き、自分のモノが変化して、ズボンの前が膨らんでいる。

 ああ、畜生。ほんと、なんでこんなにビンビンになってるんだか。

 俺のソコは、血が巡ってパンパンに硬く張っていて、準備万端状態だ。

 

 と、そこで、あることに気づいた。

 エッチをするときには必要なものがあり、俺は今、それを持っていないということに。

 「そう言えば俺、今ゴムも何も持ってないんだった」

 男同士なんだから別にいいのかも知れないけれど、

 中でイってしまうかも知れないことを考えたら、

 ゴムを付けないのはなんとなく申し訳ないような気がした。

 

 それを聞いたヒロが、おもむろに立ち上がって自分の机に歩み寄り、

 引き出しを開けて、中からゴムとローションらしきものを取り出す。

 「えっ、なんで用意してあるんだよっ」

 俺がビックリしていると、ヒロが、

 「いつかこういう日が来るんじゃないかと思って、買っといた」

 と打ち明け、ティッシュ箱も一緒に手にして戻ってきた。

 

 「別に、対ショーゴ用ってわけじゃないぞ。

 とにかく、いつ誰とそう言う時が来ても対応できるようにと思ってだな」

 「分かった分かった」

 なんだかまだウダウダと説明を続けようとするヒロの言葉を遮り、ローションを受け取る。

 

 もう一度ヒロの上に乗り、中身を手の平に出して広げ、指を奴の後ろに持って行った。

 ちょっと緊張しつつ、キュッと閉じたすぼまりの入口にあてがう。

 「んっ」

 ローションを足しながらそこを濡らして解し、柔らかくなってきたところで、少し指を沈める。

 すぼまりがひくつくのが指にも伝わってきて、すっげぇ感じてきた。

 

 「んんっ」

 入ってくる感触を耐えるようにしているヒロの表情を見ながら、

 ゆっくり中へと進めつつ体を上へと移動した。

 指を全部入れたところで、ヒロに顔を寄せたら、恥ずかしいのか何気に顔をふいと横に向ける。

 

 目の前に来た耳に意識が行って、それを舐めたら、

 「うあっ、うああっ」

 ゾクッと来たのか、ヒロが首を竦めてきつく目を閉じ、

 体を震わせるようにして、大きな声をあげた。

 それと同時に中がキュッと締まる。

 

 今日は夜でなく昼間で、家の中には、俺とヒロ以外誰もいない。

 俺はもっと声を出させたくて、さらに耳を重点的に攻めた。

 ヒロの耳は、柔らかくてなんだか舌触りがいい。

 いつまでも舐めていたい感じで、癖になりそうだ。

 

 外耳に舌を這わせ、丁寧に全体を舐めながら、

 やがて中へと侵入し、次第に奥まで舌を差し入れる。

 「わあっ、ああっ、もう駄目っ、変態っ、耳っ、やめろ…っ」

 耳は特に弱いらしいが、他の場所も、

 とにかく攻めるところ全部に予想以上の反応を見せるヒロがかわいくて、

 俺は自分のことながら、行為がどんどん大胆になっていくのを止められなかった。

 

 

 

 

 

                          

 

2013.11.01

 

 

 

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