制服に着替えて






 

 

 椎の家に行き、玄関に入って鍵をかけた途端、奴が後ろから抱きついて来た。

 「椎…?」

 柔らかく抱きしめてくる。その腕にだんだん力がこもり、

 「い、いてててっ。椎、痛いっ」

 そのうち苦しいくらいに強くなって来たので、たまらず奴の腕を外そうとしたら、力が抜けていつもの力加減に戻った。

 後ろから抱きしめたまま、黙っている。

 「なんだよ。どうした?」

 振り返り気味にして声をかけるが、なにも聞こえてこない。

 あのハンバーガー店からここまで、椎は何も喋らなかった。

 どうやら落ち込んでるというか、沈んでる感じ。

 こんな椎は初めてだ。

 こっちから話しかけようかとも思ったが、聞いていいことなのか迷ったし、

 通りで歩きながらする話でもないような気がして、結局何も話さないまま帰ってきてしまったのだ。

 俺は一つ息を吐いて、何も喋らない椎を引きずるようにして居間まで歩くと、

 後ろに椎をくっつけたままソファに座った。

 椎の上に俺が座っている格好になる。

 降りて隣に腰掛けようと思ったのだが、離してくれない。

 どうしようかと思っていると、奴が背中に額を押し付けてきた。

 「精神安定剤」

 「え?」

 精神安定剤?そんなものがいるほど、今不安定なのか?

 後輩君の言った、病気という言葉が、脳裏をよぎる。

 「おい、大丈夫か?それ、どこにあるんだ?」

 必要なら取りに行ってやろうと思って聞いたら、椎は首を横に振った。

 「玲二が」

 「……」

 おいおい。

 「お前、俺が本気で心配して言ってんのに」

 「本気で精神安定剤なんだからしょうがないだろ」

 「……」

 こんなでかい薬、おめーは飲めんのかよ。

 俺は黙って、大きく溜息をついた。

 椎は俺の背中に額をくっつけた体勢で固まっている。

 いつまでこのままでいればいいんだ?

 こうしてるのが椎の何かの役に立ってるなら、全然構わないとは思うけど…

 この状態で、話しかけてもいいのか、話しかけた方がいいのか。

 それとも椎が落ち着くのを待つ方がいいのか。

 判断がつかない。俺って、判断力ないな…

 そうして何も出来ず数分が過ぎたころ、椎が沈黙を破って突然口をきいた。

 「好きなんだ」

 しんとした空気の中、奴の言葉が大きく響いて、俺の耳に届く。

 「ああ。知ってるよ」

 そう言うと、椎が背中にくっつけていた額を離して、顔を上げた。

 「本当に?本当に俺がどんだけ好きか分かってるのか?」

 俺は笑った。

 「死ぬほど好き。もしくは殺したいほど好き、なんだろ?」

 ああ、なんかこうやって口にすると殺伐とした言葉だな。

 椎はちょっと間を置いてから、また額を俺の背中につけた。

 「それと、もうこのまま一生離れたくないくらい好き、なんだ。玲二は?」

 「このまま一生離れないんだったら、向かい合わなきゃ駄目だろ、と思うくらい好き。かな」

 いつもなら、むちゃくちゃ恥ずかしくなるところだけど、なんだか今は、

 ちゃんと言わないと椎を元気に出来ない気がした。

 それに、後ろ向いてて顔が見えないから、恥ずかしさもそれほどじゃないっていうか…

 椎が抱きしめた腕に力をこめる。

 「良かった」

 安心したような声が聞こえてきて、奴は手の力を緩めた。

 「熱くて苦いお茶が飲みたい」

 椎がねだるように言い、俺は立ち上がって笑いながら頷いた。

 「分かった。淹れてやるよ」

 

 

 熱いお茶が入り、俺と椎はソファに向かい合って座った。

 「何でも聞いていいぞ」

 椎が一口飲んで、あちっと言った後そう言う。

 もう沈んでいる様子はない。

 俺は、湯のみを持ち上げてから、

 これはもうそろそろ冷茶にした方がいいなと頭の隅で思いつつ切り出した。

 「それじゃあ聞くけど…病気って、どんな病気なんだ?」

 椎が笑う。

 「いきなり、そこから来たか」

 「そりゃそうだろ。お前の体になんかあった時、なんにも知らない、じゃマズイだろうが。

 もう完治したのか?それとも治療中?」

 「完治した。だから、心配はしなくていい」

 「そうか」

 俺はホッとした。

 精神安定剤なんて急に言うから、まだ駄目なのかと思ったじゃないか。

 よく考えてみれば普段の椎は、元気そのもので病気のびの字も感じられない。

 だけど、学校を辞めたってのは本当のことで、それほどの病気を、かつてしたことも確かなことなのだ。

 いったいどんな病気なのだろう。

 「病気になったのは高二のときだった」

 椎は、また一口飲んでから、病気の経過を話し始めた。

 

 高校生のころ。

 椎はなんでもやりたがりの性格でもって、やってみると大抵のことは上手に出来たので、

 後輩君が言ったように、そのうちみんなに頼られるようになり、

 いろんなことを任されて、とても充実した日々を送っていた。

 ところが高校二年の半ばごろ、なんとなく勘がにぶって来て、

 物覚えが悪くなったように感じていたら、その症状はどんどん進み、

 やがてそれまで出来ていたことが出来なくなり、

 ある日とうとう学校に行けなくなってしまった。

 しばらく学校を休んで治療に専念したけれど、病気は一向によくならず、

 『早く元に戻らなければ』と焦ることがさらに病気を進行させることになって、

 ついには起き上がることもできなくなり…

 見兼ねた父親が、あるカウンセラーと相談して、

 椎に学校を辞める事を勧め、実際に辞めたのだ、と。

 そんな話を、椎は、まるで自分のことではないかのように淡々と、普通の顔で語った。

 それから病名も教えてくれた。

 それは俺も知ってる病気で、特に最近よく耳にする病名だったが、

 若くてもなるのだということを知らなかったから驚いた。

 それに、これは偏見に違いないのだが、もっと違うタイプの人がなると思っていた。

 「学校を辞めた頃は気分も最悪で落ち込んだけど、『元に戻ること』じゃなくて『病気を治すこと』を目標にして、

 ちゃんとカウンセリングを受けて、薬をもらって飲むようにしたら結構早く治ったんだ」

 俺はいつの間にか眉間にしわを寄せていた。

 椎が、俺の顔を見て笑った。

 「玲二、凄いしかめっ面」

 だって。

 天は椎に二物を与えておいて、でも「やっぱり与え過ぎたから、制限させてもらうよ」と、

 奴が能力を発揮できないようにしたのだ。

 それってひどいじゃないかと思うのは、俺だけだろうか。

 『元に戻ること』じゃなく『病気を治すこと』を目標に据えることにした椎は、何を諦めたのだろう。

 簡単な言葉で説明してしまって、なんでもないことみたいに言ってるけど、物凄く悩んだに違いない。

 「今はもう病気になる前と変わらない。でも先生に言われた。

 治ったからってまた以前くらい頑張ったら、きっと、病気は再発するだろうねって」

 その頃のことを思い出したのか、一瞬キツそうな顔をする。

 「俺はもうあんなことは嫌なんだ。だから頑張らないことにした」

 キッパリと断言し、

 「でもどうしてもこっちだと、しっかりしてるように思われるし、

 自分でもしっかりしなきゃって思ってしまうから…こうすることにしたんだ」

 固い決意を見せてから、奴はテーブルの上の眼鏡を手に取ってかけて、前髪を降ろした。

 たったそれだけの事が、たったそれだけの事だけど、椎にはとても重要なことなのだと感じた。

 「そうか…それで」

 思い出す。

 『もう頑張らないことにしたから』

 あの時の言葉と、外に出るたびに姿を変える椎。

 奴の気持ちがやっと今解(わか)った気がした。

 椎が、目を伏せ気味にして薄い笑みを浮かべる。

 「昔の俺を知ってる人から見たら、堕ちたように見えるかも知れない。

 でも、今不幸かと言われたら、俺は全然不幸じゃない」

 俺はまた顔をしかめた。

 「堕ちるとか言うなよ。自分を大事にしてるだけだろ」

 それから、ちょっと照れ臭かったけど椎を見つめて言う。

 「それに、今だって俺から見たら、椎は…その…十分魅力的だと思う」

 「玲二…」

 出来る人間であること。志を高く持つこと。それは素晴らしいことだけど。

 頑張ったら病気になってしまうというのに、頑張ることはないよな。と俺は思う。

 俺は、高校時代のまるでヒーローみたいなすごい椎のことは知らない。

 そして、昔の椎がどんなに凄かったとしても、でも、俺が好きなのは、好きになったのは、今の椎なんだ。

 「だけど俺、こう言っちゃあなんだけど、今の椎だってすごく頑張ってると思う。

 全てにおいて俺より上行ってるし…って、もともとのレベルが段違いか…」

 俺は笑った。

 「何言ってるんだよ。玲二の方が断然上だろ。玲二を攻略し尽くすには、もっともっと頑張らないと」

 尽くさなくてもいいと思うが…

 なんか目がいつもの椎の目に戻っている。

 元気になってんのはいいことだけど、熱い視線が恥ずかしい。

 「頑張らないことにしたんだろ?」

 「そうだけど。玲二の為に頑張るのは楽しいからいいんだ」

 椎はそう言ってニッと笑った。

 「楽しいことは、どんだけやったっていいんだから」

 

 

 午前の講義だけをとって、午後から実家に行くと決めた日。

 椎と一緒に奴の家に帰って着替えていると、奴が話しかけてきた。

 「玲二、俺に抱かれるようになってから、少し痩せたよな」

 その目線がなんかヤラシイ。

 「その言い方、やめろ」

 「ああ、こんな話してたら、抱きたくなってきた」

 「来んな。出かけるっつっただろ」

 げしっ。抱きついて来ようとする椎の腹を足で止める。

 椎は苦笑しながら離れて、もう抱きつこうとはせずソファに座って、着替えを続ける俺を上から下まで眺めた。

 「ついでに一緒に住むってことも言ってくるといいよ」

 「え…それはまだ、ちゃんと決まってないだろ?」

 椎を見ると、奴が俺に勢いよく人差し指を向けた。

 な、なんだよっ。人を軽々しく指差しちゃいけないんだぞ。

 「考える気あるのか?」

 う。痛いところを突いてきたっ。

 「俺がこんなに玲二といたいと思ってるのに、どうも玲二は真剣に考えてくれてないみたいなんだよな」

 「いや、あの。一緒にいたいとは心から思ってる。

 んだけど、引越しのこととか契約解除のこととか考えるとその、面倒で…

 なんか伸ばし伸ばしにしてしまうっていうか」

 椎が呆気にとられた顔をする。

 「玲二、O型?」

 「勝手に決めるな…O型だけど」

 いい加減で大雑把で細かいことが苦手。どうせそうだよ。

 ん?血液型は調査済みじゃなかったのか?

 「なんだ。そんなことで二の足を踏んでるんなら言ってくれればいいのに。俺、手伝うからさ。

 書類読むのも、計算も、荷物運びも掃除もなんでもするよ」

 おいおい。空を飛べと言っても出来そうな言い方だな。

 俺は、笑ってから一つ大きく息を吐いた。

 春に引越したばかりで、またの引越しを面倒だと思ったけれど、

 よく考えてみればそんなに荷物があるわけでもない。

 運べるものは普段から少しずつこっちへ移せばいいんだし。

 それに、決めかねていた本当の理由は、

 やっぱり椎との付き合いの度合いに自分がまだ納得していないことだった。

 これを言うとまた椎は不機嫌になるんだろうけど、付き合ってそんなにたっていないから、

 とどこかで思っていた。

 それはつまり、『別れるかも知れないから早まった行動はしたくない』ってことで…

 そりゃ怒るよな。

 今の俺は、付き合った期間が長いからうまくいくとか、短いからうまくいかないとか、

 そういうものじゃないと感じ始めているのに。

 俺は、椎を見た。

 「分かった。一緒に暮らそう」

 恋人と暮らすのだから、いいときばかりじゃないだろう。

 そのうちけんかもするかも知れない。

 けんかしたら、俺、帰るとこない…って、なんで自分が出てくこと前提で考えてんだ、俺。

 椎が嬉しそうにして立ち上がり、歩み寄って来た。

 「ずっと一緒にいて欲しい」

 言いながら、抱きしめる。もう着替えが終わっていた俺も、抱きしめ返した。

 「うん」

 「ずっと一緒にいるといいよ」

 ん?

 「一緒にいなさい」

 え。どこのご主人様?

 「一緒にいろ」

 命令口調だ。

 俺は笑った。何の活用形だよ。

 「好きなんだ」

 それから、もう何回聞いたか分からない言葉を、変わらない熱さでもって、椎が口にする。

 「うん」

 俺は、椎の唇に自分の唇を重ねた。離れると、奴が言う。

 「ヤりたい」

 「夜な」

 「勃った」

 「……」

 おい。

 「ほら」

 椎が、俺の手をとって自分の股間に当てる。

 お前は、なんなんだっ。もう行くっつってんのにっ。

 奴が、どうにかしてくれという目で見てくる。

 自分で処理しろ、と言いたいところだが…

 仕方ないなぁ。

 「座れ」

 俺が、ソファを指さすと、椎は言われるままそこに座った。

 「ヤらないぞ。出すだけだからな」

 俺は、奴のズボンのボタンを外してファスナーを降ろし、大きくなったモノを取り出した。

 それを手でつまむように持って、口に咥える。

 フェラをするのはどれくらいぶりだろう。

 前に一度したきりで…あれ、俺からって初めてかも。

 でも、いつもしてもらってるからどうすればいいか分かる。

 どこが感じるか。どうすれば感じるか。

 俺が舐めたり吸ったりしていると、椎が俺の頭に両手を置いた。

 「玲二」

 呼ばれて、咥えたまま目を上げると、何も言わずに見つめてくる。

 なんか恥ずかしくなって、すぐに下を向いた。

 なんだよ。邪魔すんな。

 俺は、奴のモノを締めつけるようにしながら、口を上下に動かした。

 「んっ」

 出来る限り奥まで、えずかないギリギリのところまで咥えるようにする。

 これがいつも俺の中を満たしてるんだな。

 と、余計なことを考えたら、こっちまで勃ってきそうになったので、考えないようにする。

 少しずつスピードをあげると、

 「玲二…出る」

 椎が気持ち良さそうに言い、俺の口の中に精液を放った。

 俺は、奴のモノから口を離し、それを飲み込む。

 「玲二、上手いね。誰で練習したかと思うくらい」

 「してねーよ」

 お前の以外、したいとも思わないし。

 俺は立ち上がって洗面所へ行き、身支度を済ませると玄関へ向かった。

 「じゃあ、行って来るからな」

 声をかけると、椎が見送りに出てくる。

 「夜は食って来るんだっけ」

 「ああ」

 「ゆっくりして来いよ。でも出来れば早く」

 どっちだよ。

 俺は笑ってドアノブに手をかけた。

 「玲二、忘れ物」

 「え」

 言われて振り返ると、椎が体を寄せてキスをしてくる。

 「んっ、し…ん」

 ちょっ、もう、また勃ってもしてやらないからなっ。

 唇が離れると、俺は

 「行って来るっ」

 素早くドアを開けて、外に出た。

 まったく、これじゃあいつまでたっても行けないだろうが。

 駅に向かって歩き出し、しばらくすると、メールの着信音が鳴った。

 見ると、椎からだ。一言『制服頼む』と入っている。

 そう言えばそうだったな。

 制服を取ってきて、一緒に住むことを言う。この二つを忘れないようにしないと。

 

 

 久しぶりの実家は、なんというか他人の家みたいに見えた。

 呼び鈴を押すと、おふくろが出て来て上機嫌で「おかえりー」と言う。

 「ただいま」

 と答えたら、他人の家みたいに見えた家が、一瞬で自分の家に戻った。

 「はい、入って入って」

 促されて、中に入る。

 「あー、玲ちゃんお帰り。元気にしとったかね」

 居間でテレビを見ていたばあちゃんが声をかけて来て、俺は「うん」と頷いた。

 それからおふくろの淹れてくれたお茶を三人で飲みながら、

 俺は大学のことやバイトでの出来事などを話し、

 おふくろとばあちゃんが、俺が出ていってからのこの家でのことなどを話した。

 「そろそろご飯作らないと。玲二はゆっくりしててね」

 話していたら、時計を見ておふくろが立ち上がり、台所へ向かう。

 俺も立ち上がって、二階の自分の部屋へ行った。

 高校の頃に比べれば多少片付いてはいるものの、家具の配置などはそのままの俺の部屋だ。

 俺は、洋服ダンスに近寄って、扉を開けた。

 目当てのものはすぐ目の前に下がっていた。

 おふくろは、こういうのをきちんと取っておくタイプで、高校の制服が一揃い、

 スクールシャツもネクタイも、一緒にハンガーにかけてある。

 これなら、すぐに着られる。

 俺はそれを取り出すと、部屋にあった紙袋に入れた。

 その後、アパートに持って行きたい物をピックアップしたり、昔よく読んだ雑誌を読み直したり、

 高校時代の写真を見たりしていたら、一階から呼ばれた。

 降りて行って、三人で夕飯を食べる。

 舌に馴染んだホッとする味で、しかもよく見れば俺の好物ばっかりだ。

 「おかわり」

 茶碗を差し出すと、多めによそってくれる。

 今頃、椎は一人なんだな。何食ってんだろ。

 そう考えてから、俺は、おふくろに部屋の話を切り出した。

 友達に一緒に住もうと言われていること、その部屋が格安で借りられることを伝える。

 おふくろは、あらそうなの、とかへぇなどと相槌を打っていたが、反対する様子はなかった。

 「すごく綺麗で広い部屋でさ」

 「玲二がそうしたいならそうすればいいと思うけど…

 お金のことだけは、友達同士でもちゃんとしなきゃ駄目だからね」

 「分かってるって。引っ越しが終わったら、住所教える」

 さすがに本当のことは言えず、何カ所か嘘もついてちょっとだけ後ろめたい気持ちになる。

 だけど、なんでも真実を告げればいいってもんでもないし…

 飯を食い終わり、一緒にしばらくテレビを見た後、俺は立ち上がった。

 「そろそろ帰るよ」

 「もう?泊っていけばいいのに」

 「帰るのに結構時間かかるし、それに明日も学校あるし、バイトもあるから」

 「そう」

 それを聞くと、おふくろは奥の部屋へ行き、なにやらいろいろ持ってきた。

 乾物やレトルト食品や野菜、肌着や靴下など入った袋を持たせられる。

 「母さん、俺、これから電車に乗るんだけど」

 と言うと、おふくろは全然気にしてないようで、笑いながら半ば強引に手渡した。

 「大丈夫、大丈夫。持っていけるでしょ」

 元々持ってきた自分の鞄と、制服の袋も持ったら、両手がいっぱいになる。

 自分で大きい袋に小さい荷物をつっこんでまとめ、

 「またいつでもおいで。体に気をつけて」

 おふくろとばあちゃんに見送られて、俺は実家を後にした。

 

 

 椎の家に着くと、八時半を少し回っていた。

 ドアの前に立ったら、ドアノブに手をかける前に椎が中からドアを開けた。

 「おかえり」

 ちょっとびっくりしたが、奴を見て笑った。

 「ただいま」

 めっちゃ嬉しそうだ。感情出過ぎ。ブンブン振るしっぽが見えそうなくらいだ。

 「すごい荷物」

 椎が驚き、俺は苦笑する。

 「おふくろが持ってけって」

 それを聞いて奴も笑うと、俺の手から荷物を取り上げるようにして持って、居間の方へと運んでくれた。

 「どうだった?」

 運びつつ聞いてくる。

 「たまには帰るのもいいかな。行き帰りがちょっと長いけど。お前はなんか食ったのか?」

 「俺は玲二食うから」

 いや、真面目な話。

 「何食ったんだよ」

 もう一回聞くと、椎は荷物を居間の隅に置いて、しょうがないなー、という顔で俺を見た。

 「そんなに聞きたいのか?パスタだよ。一人淋しく。

 それから風呂に入って、あそこも洗って歯も磨いて、すぐに玲二を抱けるよう準備万端にした」

 そんな事までは聞いてない。

 なんか今日はエロスイッチ入りっぱなしだな。しかも『強』で。

 したい気持ちが溢れて、もう今にもくっついて来そうな気配が漂っている。

 俺は奴に手の平を向けて、苦笑しながら言った。

 「ちょっと一息つかせてくれよ」

 それから用を足すためにトイレに向かうと、なぜか後ろからついて来る。

 「なんだよ」

 「玲二がするとこ見たい。一緒に入ってもいい?」

 俺は唖然とした。

 「バカッ。小くらい、落ち着いてさせてくれよっ」

 「落ち着いてすればいいよ。ただ俺が勝手に見るだけだから」

 「見るなっ」

 「なんで。俺、玲二がするとこ前に見たことあるよ」

 え。

 「付き合う前、一緒にトイレ行ったとき」

 大学のトイレでのことだろうか。

 そりゃ、男同士で一緒にトイレに入るなんてことは、珍しくもなんともないことだけれど。

 「あのとき見てたけど?」

 「そのときは、そんな目で見てるなんて知らなかったから…

 でも今は、そういう目で見てるって分かってんのに…落ち着いてできるかっ」

 顔が火照ってきた。

 珍しくもなんともないはずの事が、今思い出すとなんかすごく恥ずかしい事に思えて来た…

 あの頃の俺、そんなふうに見られていたとも知らずに、無防備だったよ。

 あの頃の俺、かわいそうで泣けそうだ。

 「玲二、しないの?」

 「って、そのドアを押さえてる手をどけろ」

 椎がトイレのドアを開け放して、閉められないように押さえている。

 「ここは公共のトイレで、俺はいないと思ってくれればいいよ」

 「思えるかっ。これ以上しつこくすると、もう一緒に住むのやめるからなっ」

 俺の言葉を聞いて、椎がドアから手を放した。

 それまでからするとあっけないくらいすんなりと素直な反応で、

 この言葉にこんなに効き目があるのかと驚いた。

 俺は中に入り、ドアを閉めて鍵をかけた。

 でも、している間も、外で音を聞いてるんだろうなとか考えたら、気が気じゃなかった。

 用ぐらいもっと気楽に足したいんですけど。

 手を洗って外に出ると、そこに椎の姿はなかった。

 てっきり聞いてるかと思ったのに。べ、別にがっかりしたわけじゃない。

 ガサガサと音がして、そっちを見ると、椎が、持ち帰った荷物を開けて中を見ていた。

 制服は、すでに出されてソファの上に置かれている。

 「あとは、海苔とか佃煮とか下着なんかだよ」

 俺は袋を覗き込んでいる椎に声をかけた。

 「うん。そうみたいだね。おふくろさんって、面白いなぁ。衣食の根っこを押さえてる感じ」

 俺は苦笑した。その表現もなかなか面白いけど。

 「これ、着てみていい?」

 椎が、制服を指さして言う。

 俺は、「ああ」と答えてから、食べ物の入った袋を持って、台所へ向かった。

 乾物やらレトルト食品を棚にしまった後、喉が渇いたので、

 冷蔵庫からペットボトルを出してラッパ飲みする。

 飲みながら振り返ると、椎が制服を着終わって、壁の姿見に自分を映して見ているところだった。

 俺は思わず飲むのをやめて、ペットボトルを口から離した。

 「どうかな」

 俺が見ているのに気づいて、椎がこっちを見てくる。

 白いスクールシャツにグレーのスラックス。

 細ストライプのネイビーのネクタイを締め、紺色のブレザーを羽織った椎は。

 反則だ、と思うほどカッコ良かった。

 俺の友達の誰も、こんなにカッコ良く着こなしてなかった。

 眼鏡はかけていない。前髪も分けて、きりっとした表情をしている。

 ああ。これなら本当に生徒会長っぽい。すんなり納得できる。

 いつもの甘えたイメージがどこかに行ってしまった。

 なんで、同じものを着ても、これほどの違いが…

 「お前、似合い過ぎ」

 俺は、情けないような誇らしいような複雑な想いで、そう言った。

 やっぱりちょっとだけ手や足の丈が短いけれど、でもそんなの全然気にならないくらいの、

 雰囲気の変わりようだった。

 制服の力って凄いな。

 「惚れ直した?」

 聞きながら、椎が近づいてくる。

 俺は、飲みかけのペットボトルをシンク横の台に置いた。

 「これで襲おうかな」

 間近でそう言われて、心臓がドキドキする。

 「椎、あの」

 「襲って欲しい?」

 ってもう、唇触れそうなんだけど。

 ごくっ。唾を飲み込んだ。と、同時に、椎がすいっと俺を離れた。

 あれ。ちょっと肩透かしを食らった気持ちになる。

 椎はソファの方へ戻ると、制服を脱ぎ始めた。

 ああ、脱いでしまうのか。

 エロスイッチが入ってると睨んだけど、俺の見当違いだったのか?

 こんなに簡単に引いてしまえるなんて。

 「もういいのか?」

 俺は、少し残念に思いつつ聞いた。

 「ああ。ありがとう。満足した」

 そうか。もういいんだ。

 俺は、飲みかけのペットボトルに手を伸ばして、続きを飲んだ。

 この状況、また俺の方がやらしいみたいになってる気がする。

 今、確かに期待したし…

 「今日、玲二にしてもらって分かったんだけど」

 着替えつつ椎が突然言い出して、俺はなんのことかと奴を見た。

 「俺、してもらうより、する方が断然好きなんだ」

 してもらう、って昼間のことか?…良くなかったのか?

 俺は、初めて自分からしたフェラのことを思い出して眉間にしわを寄せた。

 その割には、結構すぐイってたように思ったけど。

 椎が、俺の表情を見て、慌てて手を振る。

 「ああ、玲二が上手とか下手とかそういうことじゃなくて、

 なんていうか、自分が積極的に攻める方が性に合ってるなぁ、と」

 俺は何を言われているのかピンと来なくて、考え込んだ。

 どういうことなんだ?悪い話?

 椎が困ったように笑う。

 「不満があるとかそういうんじゃないから、誤解するなよ。玲二は上手い。

 でもほら、前にも言っただろ?あんまり慣れちゃって欲しくもないんだ」

 慣れて欲しくないから、攻めるな、って…?

 「そんなのお前のわがままだろ。経験を重ねればなんだって慣れていくもんだし」

 「だから、玲二に攻める方の経験を重ねて欲しくないってこと」

 「じゃあ、俺がすごく好きだと思って攻めたくなっても我慢しろってのか?」

 俺の言うことを聞いて、椎が驚いたように俺を見る。

 それから感激した、という目になって嬉しそうにした。

 あれ?俺今そんな反応がくること言ったっけ。

 椎は着替え終えると、制服を手に近づいてきた。

 「とにかく、俺は悦ばす側がいい。だから黙って抱かれろ」

 椎は、俺の前まで来てから、それ以上喋るなというように、俺の口に手を当てた。

 とにかく、とか、いいから、とか有無を言わせないよな、お前は。

 「あ、でも、喘ぎ声はいくらでもあげていいからな」

 ……恥ずかしいから、もうお前が黙れ。

 喘ぎ声はあげようと思ってあげてんじゃねぇし。

 って、なに考えさせんだよ。

 俺の口の前から手をどけて、椎が制服を差し出した。

 「ところで、これ」

 「ああ、いいよ。紙袋に入れておいてくれれば。また実家行くとき、持ってくから」

 俺が言うと、椎が首を横に振った。

 「そうじゃなくて、玲二にも着て欲しい」

 「え」

 「俺、玲二の制服姿、一回だけ見たことがあるんだ。むちゃくちゃカッコ良かった」

 「……」

 「もう一回見たい」

 俺の制服姿なんて普通だと思うぞ。当時誰もそんなこと言ってくれなかったし。おふくろ以外は。

 「どこで見たんだよ」

 「うちのクリニック。着てきたことあるだろ」

 俺は思い出そうとしてみたが、残念ながら無理だった。

 歯医者はただの出かけ先であって、特別な場所と意識してたわけじゃなかったから、

 服のことなんて気にしてなかったし覚えていない。

 「覚えてないなぁ。いつも着替えてから行ってたと思うけど。そんなとき、あったっけ」

 「あったんだ。玲二が制服姿で現れたとき、胸がキューンとして、たまらない気持ちになって、

 そのとき初めて俺は自分がゲイだって認めたんだ」

 胸がキューンって、なんか乙女チックな表現だな。

 いや、男だってキュンとすることくらいあるけれど。

 「どうしても、もう一回見たい。着るぐらいいいだろ?頼む」

 椎が、制服をグイと前へ突き出して、頭を下げる。

 「う…んー、ま、いいけど」

 俺は、躊躇しつつ制服を受け取った。

 椎の後では見劣りするだろうと思ったけど、それはそれで奴の気が済むかと思って着替える。

 ギュッ。ネクタイを締め終え、ブレザーを羽織って鏡を見る。

 腕や足の丈が、ピッタリ合っていた。俺の服なんだから当然だけど。

 やっぱり椎の方が長いんだな。似合ってたし。

 「ああ。あの時の玲二だ」

 椎の声がして、奴の方を見ると、うっとりとした表情をしている。

 なんか俺、恥ずかしいんだけど。

 椎が俺の方にやってきて、俺の斜め前に立った。満足そうに見つめている。

 と思ったら、

 「わっ」

 突然、俺をお姫様だっこした。そのままベッドまで運ばれる。

 「な、なにするんだよ」

 椎は俺をベッドに放るようにして乗せると、上からのしかかって来た。

 俺を見つめる目が輝いている。

 「めっちゃ萌える」

 「萌えんなっ」

 これは…

 最初っからその気だったんだな。

 なんか嫌な予感がしたのに、着てしまった俺も…悪いんだろうな、やっぱり。

 「制服脱がすの、夢だったんだ」

 言いながら、椎の手がブレザーのボタンを外し始める。

 「お前の夢は俺を洗うことだったはずだろ」

 「二つ目の夢」

 いったい幾つ夢が…?

 「妄想の中では何度も脱がしたけど、やっと実現」

 「変態っ」

 椎が楽しそうにして、ブレザーの前を開き、ネクタイに手をかけた。

 それを握ってじっと見た後、俺を見る。

 「ネクタイが何の為にあるか、って、そりゃ縛る為だよな」

 「え」

 「それか…口に押し込む」

 サ、サディスティック…

 「そんなことしたら、俺、許さないからな。したいなら他の誰かとしろ」

 椎が、ネクタイの結び目を解き、スッと俺の首からはずす。

 「玲二」

 ただの長い紐となったネクタイが、椎の手から下へ向かって垂れている。

 「俺は玲二としかしたくない」

 ごくっ。

 「俺、縛っていいよ」

 「!」

 「俺を玲二の愛で、縛って」

 うわーっ。ひぃー。恥ずかしいっ。

 その言葉、俺の限界点を超えてるっ。と、鳥肌立ったっ。

 「どうした?寒い?」

 ああ。相当な。

 「し、縛り方なんか知らないし、縛りたくないっ!それにお前、さっき攻めるなって言っただろっ」

 俺が言い放つと、奴はきっぱり言った。

 「ネクタイは別」

 分からん。俺には分からないぞ。

 「俺はやらないからな」

 俺がネクタイから目を反らして動かないのを見て、椎は手の中のそれに視線を移す。

 「これを見て萌えないとは…」

 そして、首を振りながら片言で呟く。

 「タカラノモチグサレ…」

 絶対!お前の感覚の方がおかしいんだからなっ。

 「そんな小道具どうだっていいだろ?もっとストレートに来いよっ」

 「おっ、言ったな」

 それから、体を離して俺の全体を眺めるようにする。

 「そうだな…まだブレザーと白いスクールシャツとグレーのスラックスもあるし、いいか」

 そう言って、ネクタイを手から床へとするりと落とした。

 なんで制服にこだわるんだ?普通のシャツやズボンを脱がすのとどう違うんだ。

 「ところでさ、ストレートにってのは、つまり俺ので壊れるくらいガンガンに突きまくられたいって、

 そういうこと?」

 こ、壊れるくらいガンガンに…

 なんかクラクラして来た。もう勘弁してください。

 椎がスクールシャツのボタンに手をかけて、一つずつ外していく。

 前を開いて首筋を見つめると残念そうに呟いた。

 「まだ付いてる」

 キスマークのことだ。

 俺の首は敏感でもって痕が付きやすいらしく、一度ついたキスマークがなかなか消えない。

 椎はキスマークをつけるのが好きなようだが、

 俺が一つだけと制限しているので、残っているのを見ては、つまらなさそうにする。

 「ここが無人島で、他の誰にも会わないんだったら、体中にキスマークつけまくるのに」

 やめてくれ。想像したら、なんかゾクゾクして来た。

 「ん?別に首より上じゃなければ、体中にキスマークつけたっていいんじゃないか?」

 俺はハッっとして椎を見た。

 こういうことを言い出したときの椎は、歯止めが効かないのだ。

 さっそく胸の突起近くの肌に吸い付く。

 「あっ、こら」

 痛いくらい吸われて、思わず椎の頭を押して遠ざける。

 「付けるなってっ」

 「もう付いた」

 椎が離れてその場所を見つつ、ニッと笑った。このっ。

 「ネクタイも駄目だし、キスマークもつけるなって、玲二の言うこときいてたらなんにも出来ないよ」

 椎はシャツの残りのボタンを素早く外し、前を全開にした。

 「おいしそう」

 そう言って、ブレザーとスクールシャツごと俺を抱きしめ、唇を重ねる。

 「んっ、…んん」

 舌を差し入れて俺の舌に触れ、口の中を舐めまわしながら、椎が片方の手で俺の前髪をかき上げる。

 それだけのことで、息遣いが荒くなってきて、気持ちよくなってしまう。

 「玲二…好きだ」

 離れると、その手を俺の頬に当ててそう呟いてから、次は胸へと移動させる。

 「あっ」

 手の平をそっと乳首の上に覆うように乗せただけなのに、触られると思ってビクッとしてしまった。

 「制服で乱れてんの、超興奮する」

 椎が言って、首筋にキスをしてきて、目を閉じる。

 「んっ」

 「でもこれは思ったよりかさばるな」

 椎はブレザーの前立てに手をかけ、肩から袖の部分を抜いてそれを脱がした。

 いつものように床に落とすと、その手をベッドの下に突っ込んでゴソゴソしている。

 取り出したのは、最近使わなくなっていたローションだった。

 それをそばの棚に置いてから、胸に顔を寄せ、舌で乳首を舐め上げる。

 「あっ」

 それから口に含んで、吸った。

 「んっ、…椎」

 そうして愛撫を施しながら、シャツを全部脱がした後、自分も服を脱ぐ。

 全て脱いでしまってから、俺の隣に横になった。

 椎のモノはもう立ち上がっていたし、俺のも同じ状態だった。

 スラックスを履いたままなので、キツい。

 椎がふいに、布越しに俺のモノに触れてくる。

 「あっ…」

 大きくなっていることを確認して、椎がベルトに手をかけてそれを外し、

 スラックスのファスナーを降ろした。

 俺のモノを取り出そうとしたらしいが、その手が止まって、

 思い直したようにスラックスを足から抜いて下着も靴下も取り去った。

 二人とも何も纏ってない姿になる。

 椎は、もう一度俺の隣に横になって俺の腰に手を伸ばし、引き寄せつつ自分の方に背中を向かせた。

 「玲二の背中、滑らかでそそる」

 椎は、後ろから、自分の胸と腹、

 それから立ち上がったモノを俺の背中から尻にかけて密着させてくる。

 「今日、一日中したくてたまらなかった」

 しばらくそうして抱きしめていたが、やがて身を起こして、棚のローションを取った。

 中身を手に出して指に馴染ませ、その指を後ろのすぼまりに押し当てて、グッと挿入して来る。

 「あ」

 指をゆっくり奥へと進めながら、椎が耳元で言う。

 「本当はこのまま後ろから攻めたいけど、玲二は俺の顔が見えないと嫌なんだよな」

 それを聞いて、風呂で口にした自分の言葉を思い出す。

 「あ、あのときは壁だったから…」

 恥ずかしくなって言い訳のようなものを言おうとした時、椎の指が俺の感じるとこを刺激してきた。

 「ああっ」

 声をあげてしまい余計に恥ずかしくなる。でも

 「あっ、んっああっ」

 続けて同じ箇所を攻められて、声が出るのを止められない。

 「そこっ、ああ、もうっ…」

 たまらなく感じて、このままではイッてしまうと思ったとき、椎が指を抜いた。

 俺を仰向けにして、

 「俺も、玲二の感じてる顔見ながらがいい」

 唇を重ねてくる。舌を絡め取られ吸われた。

 「んっ、んっ」

 どんどん体が熱くなる。唇を離して、

 「マサユキ」

 椎を見つめ、もう一度俺からキスをする。

 唇が離れると、今度は椎が呟いた。

 「玲二」

 そしてまた唇を重ねてくる。

 「マサユキ」

 「玲二」

 互いの名前を呼び合いながら、唇を合わせたり離したりする。

 椎の声が心地いい。椎の唇が気持ちいい。

 何度も繰り返すうちにこの上なく感じて来て…

 やがて俺と椎は、正常位で繋がった。

 

 

 

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