第二話 出会い4


 

 

 日曜日。デートの後、詩生を俺の家に誘った。

 デートとは言っても、やっていることは両想いになる前と、なんら変わりない。

 どこかに一緒に出かけて、遊んで、そのまま帰るだけだ。これまでは。

 でも、今日は違う。

 今日は、ちゃんと話すと決めた日だ。

 だから、俺はこの気持ちを今日こそハッキリ伝える。

 

 お互いに好きなんだし、そばにいるのだから触れたい、と俺は思う。

 詩生と楽しい時間を過ごせば過ごすほど、

 そういうことをしたくてしょうがなくなっているのに、

 詩生からはそんな気配を微塵も感じない。

 詩生は俺を好きだと言ってくれたけど、全然そういう気持ちにならないのだろうか。

 出かけ先で買った飲み物の残りを飲みながら、向こうで見たものや、

 起こったことについて詩生と喋っていた俺は、話が途切れたところで、

 「詩生、話があるんだけど」

 と切り出した。

 「ん、何?」

 詩生が、首を少し傾げて無邪気な瞳で俺を見て、

 俺は一瞬やっぱり言うのをやめようかという気になる。

 エッチって、それっぽい雰囲気になったときに自然に突入…

 というのが一般的な流れだろう。

 俺の理想もそれで、今このときだって、本当はそれを望んでいる。

 だけど、待っていても一向にそうなりそうにない…し、

 そうだ、俺は、今日、話すと決めたのだ。

 俺は、弱腰になった気持ちを、もう一度立て直す。

 「詩生、あの…」

 言いよどむ俺を、詩生が不思議そうに見ている。

 俺は、緊張が高まって、ごくりと唾を飲み込むと、

 詩生とまっすぐ向き合い、思わず正座をした。

 すると、それを見た詩生も、何か大事な話だと思ったらしく、俺と向き合って正座をする。

 「詩生」

 「はい」

 真面目な顔になって返事をする詩生を見て、苦笑いを浮かべそうになる。

 でもそれを抑えて、俺は一つ息を吐き、それから思い切って告げた。

 「詩生。俺、詩生とエッチしたい」

 その言葉に詩生が、

 「えっ…」

 驚いた声をあげる。

 「駄目?」

 少し不安になりながら聞くと、彼は困惑の表情で俺を見た後、

 ゆっくりと視線を下に落とした。

 そして、俯いたまま黙っている。

 すぐにいい返事はもらえないかも知れないと思っていた。

 キスしたいと言ったとき、あんなに震えていたし、いくら好きでも、

 それを許すのはやっぱり抵抗があるんじゃないかと。

 俺は、また早とちりをしないよう、冷静でいられるように、

 そんな場合の言葉も考えていたので、それを口にした。

 「駄目なら、待つからそう言って」

 エッチを今すぐしたいのは山々だったけど、とにかく今日は、気持ちを伝える、

 ということが出来れば、とりあえずそれで良かった。

 「ただ、俺はいつでも詩生とそうなりたいと思ってて、

 詩生もそう思ってくれたらすごく嬉しいと思ってる」

 「……」

 「それだけは覚えといて」

 そこまで言い切って、ちょっとホッとする。

 言いたかったことは言えた。それだけで満足だ、と思っていたら、詩生が顔を上げた。

 「待って」

 俺を制するようにそう言ってから、ギュッと目を瞑って、

 何かに耐えるようにした後、目を開け、俺を見て続ける。

 「大丈夫。僕、鏡くんなら…」

 「え…?」

 「鏡くんなら、その…エッチ…しても…」

 最後の方は俯き加減で、声も小さくなって聞き取りにくかったけど、

 今、確かに詩生は、してもいいと言った。

 「いいの?」

 詩生の意志をきちんと確認したくて、俺が改めて聞くと、

 詩生は頬を染めて、コクンと頷いた。

 嬉しくなって、膝をついた姿勢で詩生に近寄って手を伸ばし、抱きしめる。

 けれど、言葉とは裏腹に、体が震えているのに気づいて、俺は眉を寄せた。

 「…大丈夫?」

 心配になって聞くと、詩生が申し訳なさそうにした。

 「大丈夫。ごめんね。こうなってるのは、鏡くんのせいじゃなくて…」

 「え…?」

 どういうことかと思っていると、詩生が、思い切ってという感じで話しだす。

 「こんなこと言うの恥ずかしいけど、僕、実は、電車で痴漢にあったことがあって…」

 「……」

 「中学のとき電車の中で…相手、大きな男の人で…

 強い力で捕まえられて動けなくて、触られてる間、怖くて声も出せなくて…」

 俺は、詩生の告白に、驚いて口を開けた。

 大きな男が欲望に駆られ、詩生の体だけを求めて、

 彼に汚らわしい手で触れるところが頭に浮かび、

 まるで自分が触られたかのように、ゾッとして鳥肌がたった。

 自然に眉間にしわが寄る。

 「詩生…」

 詩生は、言いながらそのときの状況を思い出したのか、

 ちょっと青ざめているように見えた。

 彼は、その出来事が忘れられないのだ。

 だから、俺がキスしたいと迫ったときも震えて…

 詩生の味わった恐怖を思うと、たまらない気持ちになった。

 「今も、思い出す?」

 俺の問いに、詩生がコクンと頷いてから、自分を蔑むように言う。

 「僕、男なのに、抵抗も出来なくて……不甲斐ないやつでしょ」

 俺はそれを聞いて、思いっきり首を横に振った。

 「だって、まだ中学生だったんだろ!?体も小さいんだし……詩生が悪いんじゃないっ!

 俺がその場にいたら、そんな奴、ぶん殴ってやったのに!」

 俺は激昂して、思わずそれを噴出させるような勢いで叫んだ。

 詩生が驚いたように俺の顔を見る。

 俺が拳を作り、詩生の前で振ってみせると、何故か彼の瞳がだんだん潤んで来て、

 「え」

 今度は俺がビックリした。

 な、なんで泣くんだよ。俺、泣かすようなこと言ったっけ?

 詩生が涙を浮かべたまま、泣き笑いのような表情を浮かべるので、

 「ど、どうしたっ?」

 俺が慌てていると、彼は俺と同じように膝を床について立って、

 自分のスクールシャツのボタンに手をかけ、上から一つずつゆっくりと外し始めた。

 何を始めたのかと見ていたら、全部外して前を開き、袖を抜いてスルリと床に落とす。

 詩生はインにランニングを着ていて、それも捲り上げて脱ぎ、同じように床に落とした。

 「詩生…?」

 上半身裸になった詩生を、呆気に取られながら見つめる。

 柔らかそうで暖かそうなその肌を、自ら晒した詩生は、

 続けてズボンのベルトに手をかけた。

 バックルを外そうとするので、俺は詩生の手を掴んで止めた。

 「詩生っ、何してるんだよっ」

 呆然とする俺の目の前には、少し頬を染めた詩生が、立っている。

 「僕をあげます。鏡くんに」

 そう言って微笑む詩生に、俺は言葉をなくした。

 呆然としたまま、彼を見つめ、本心を窺うように瞳を覗き込んで詩生に聞く。

 「だって…いいの?」

 彼が小さく頷き、俺は思わず、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 大好きな詩生が、恐怖心も乗り越えて、俺に全てを委ねようとしてくれている。

 そう思ったら、たまらない気持ちになる。

 恐る恐るという感じで、滑らかな肌に触れると、指先から温もりが伝わってきた。

 「でも…」

 俺は指を止め、肌から離して、彼を見る。

 「無理しなくていいよ。俺、まだ待てるから」

 なにも詩生が心に傷を負ったときの話を聞いたばかりの今、ヤることもない。

 俺はそう思ったが、

 「ううん。僕がしたいの。鏡くんと」

 詩生が言って、俺の手を握ってくる。

 「だけど」

 俺がまだ躊躇していると、彼は握った俺の手を自分の左胸に押し当てた。

 トクントクンという心臓の鼓動が伝わってくる。

 「鏡くん、しよう?」

 詩生が少し首を傾げるようにして柔らかく微笑み、俺は、詩生の顔をじっと見つめた。

 なんだか詩生が、穏やかで暖かい光を放っているように思える。

 泣けてくるくらい、愛しい。

 今ここでやめたら、詩生を逆に傷つけてしまうような気がして、

 俺は頷くと、詩生の体を包むように手を背中に回した。

 そうして触れたら、詩生を愛したい衝動が胸の奥から突き上げてくる。

 その衝動のまま、詩生の唇に自分の唇を重ねた。

 詩生は、もう震えていない。

 俺は、合わせるだけじゃない、もう少し深いキスがしたくて、

 彼の唇を舐めるようにして舌を差し入れようとした。

 でも、緊張しているのか、詩生の体は強張っていて、唇をきつく閉じたまま固まっている。

 俺が、一度離れて、

 「詩生、力を抜いて口開けて」

 そう促すと、詩生は素直に力を抜いた。

 そこで舌をスッと差し入れて、彼の舌に自分の舌を押し付ける。

 詩生も同じようにしてきて、そのまま絡ませあうと、

 「んっ、んっ」

 どちらともなく声が漏れた。

 詩生の舌を吸うと、柔らかな唇が、俺の唇を包み込んでくる。

 舌や口の中を撫でるように舐め、歯列をなぞり、

 唇を吸ったりしていたら、下半身が疼いてたまらなくなってきた。

 俺は唇を離すと、少し身を屈めて、

 かわいらしい桜の花びらのような乳首に、チュッとキスをした。

 「あっ」

 詩生が眉を寄せて、声を上げる。

 彼の反応を見ながらそれを数回繰り返すと、

 感じるのか、そこは次第にツンと隆起してきた。

 「いいの?」

 聞くと、恥ずかしそうにする。

 「吸っても、いい?」

 乳首に顔を寄せながら上目遣いに聞いたら、

 顔をかあっと赤らめて小さく頷き、ギュッと目を閉じた。

 俺は、OKサインだと受け取って、そのまま小さな胸の突起を口に含んだ。

 そうして少し強めに吸い上げると、詩生の体がビクッと揺れる。

 「あっ、んっ、鏡くん…っ」

 赤くぷっくらと膨らんだそれは、まるで果実みたいで、

 舌触りも良くて、ずっと口に含み続けていたいと思えた。

 「詩生、おいしい」

 顔を上げて言うと、詩生はますます恥ずかしげにする。

 それを見てから、俺はもう一度、かわいい乳首を口に含んだ。

 ちゅう、と吸うと、

 「んっ」

 気持ちいいのか、下を見たら、

 さっき詩生が自ら寛げようとしていた部分が、少し膨らんでいる。

 俺は、布の上から手でそれにそっと触れた。

 「あっ」

 詩生が小さく叫んで、腰を引き気味にする。

 「詩生…」

 バックルに手をかけ、ファスナーを降ろしてズボンを下にずらす。

 勃ち上がり始めているそれに、下着の上から触れ、

 下から上にツーッと指を滑らせると、

 「んっ」

 詩生は体を前屈みにして俺の肩を掴み、刺激に耐えるようにした。

 触る場所を移動させるごとに、ビクッと反応する詩生が、愛しくてたまらない。

 上下にそれをなぞるような動きを数回繰り返した後、

 俺は下着に手をかけて、下にずらした。

 すると、乳首同様、かわいらしくてツルリと陶器のような詩生のペニスが、露になった。

 それは勃ち上がっていたが、

 覆っていた布から解放され外気に触れると、さらに上を向いてきた。

 見ると先端に透明な露が浮かんでいる。

 俺は、それを見て口をその場所へと移動させた。

 そのまま詩生のモノを手でつまむように持って、

 溢れ出した液体を舐め取りながら、スッポリと口で覆うようにして咥えた。

 「あっ、鏡くん、や」

 そうして射精を誘うように、唇で扱くようにして吸いあげる。

 「ああっ、駄目っ、離して」

 詩生の体が、小刻みに震える。

 俺は、一度口を離して詩生を見上げ、

 「出していいよ」

 そう言うと、それをもう一度咥えた。

 詩生に、たくさん気持ちよくなって欲しい。

 俺のもたらす刺激が、気持ちよさが

 詩生の乳首やペニスを硬くさせているのかと思うと、すごく興奮する。

 「や…あ…、んっ」

 口を動かすスピードを上げると、詩生が眉根を寄せて、俺の頭に手を置いた。

 「あっ、あっ」

 彼の体がビクビクッと震えて、次の瞬間、

 「んっ」

 口の中に精液が放たれる。

 「ご、ごめんなさいっ!」

 詩生がものすごい勢いで謝って、キョロキョロと何かを探し始める。

 どうやら、ティッシュを探しているらしい。

 そんな詩生を横目に見ながら、俺は口の中のものをごくんと飲み込んだ。

 詩生が、驚いた顔をする。

 「え、嘘…、鏡くんっ、やだ、出して」

 慌てつつ、何故か悲壮な表情をする詩生を見て笑う。

 「もう飲んじゃったし、これからもそうするから気にすんな」

 「え、嫌だー」

 詩生が顔を歪める。

 「嫌じゃないって。詩生のなら。それより、続き」

 俺は言って立ち上がると、詩生の手を引いてベッドへと連れて行き、座らせた。

 机の引き出しからローションを取り出して脇に置き、

 キスをしながらゆっくりと詩生を押し倒す。

 詩生は、上も下も脱いでしまっていて裸の状態で、俺は服を着ていた。

 俺も服を脱ぎ同じ姿になると、詩生の上に乗って、その状態で彼を見下ろした。

 「ごめん。俺、初めてで、上手く出来ないかも知れない。

 気持ちよくしてあげられるかどうかも……。

 でも、全部詩生のことが好きですることだから…」

 俺が真剣に言うと、

 「うん。分かってる」

 詩生が笑って頷き、

 「大丈夫。僕も鏡くんが大好きだから」

 そう続けた。

 俺は、嬉しくて体を倒すと、詩生をぎゅっと抱きしめた。

 唇を合わせ、胸の突起に手を這わせると、詩生がビクッとし、

 その反応を見せたことが恥ずかしかったのか、目をきつく閉じる。

 その様子がまたかわいくて、もっと見たくて、

 俺は触られたことで硬く立ち上がった赤く小さなそれを、指先で転がした。

 「あっ、ん」

 詩生の声が耳を刺激して、ゾクッと来る。

 片方の乳首をそうして転がしつつ、もう片方を口で吸ったら、

 「んっ」

 詩生のモノがどんどん勃ち上がってきた。

 俺の刺激で気持ちよくなってくれているんだと思ったら、こっちも感じてくる。

 俺は、ローションの容器に手を伸ばして、中身を手に取った。

 その手を、詩生の後ろに持って行き、ローションを馴染ませる。

 円を描くように動かしていた指を、少しずつ中心に寄せていき、

 やがてゆっくりとソコへ沈めた。

 詩生のそこは抵抗なく俺の指を飲み込んでいく。

 詩生が目を閉じて、眉間にしわを寄せているので、気持ち悪いのかも知れないと思う。

 でも、これをしないと進めない。

 俺は、そこを丁寧に解しながら、

 詩生の胸の尖りを口に咥え、吸ったり、舌で弾いたりした。

 「あっ、あっ」

 詩生の中がヒクヒクと蠢く。

 ローションを足して、指の滑りが良くなってきたところで本数を増やした。

 入り口も中も、始めに比べると、随分柔らかくなってきている。

 俺は、十分潤って淫猥な音をたて始めたそこから指を抜いて、

 同じ場所へ自分のモノをあてがった。

 早く詩生の中に入りたい。

 そうはやる気持ちを必死に抑える。

 なるべく優しくする、と決めていた。

 詩生は初めてなんだし、俺はテンパってつい激しくしてしまいそうだし。

 きっと意識し過ぎるくらい意識して、ちょうどいいくらいだ。

 ましてや、あんな話を聞いた後なのだから。

 「詩生、行くよ」

 俺が言うと、詩生がコクンと頷き、俺は、押し当てたモノにグッと力を込めた。

 「んっ」

 先端が入り口を押し開いて、詩生の中に入っていく。

 「あっ、んっ」

 すがるような心もとなげな声をあげる詩生に、俺は、

 「大丈夫?」

 と問いかけ、もう一度頷くのを見てから、また少しずつ奥へと進めた。

 全部が入ったところで一度動きを止め、詩生をぎゅっと抱きしめる。

 「詩生、入った」

 耳元で囁いて、首筋に口づけてから、腰をゆるゆると動かした。

 そうして緩く突き上げていると、遠慮がちな俺を奥へ奥へと誘っているみたいに、

 詩生がきつく締め付けてくる。

 俺は、誘われるまま更に中を穿った。

 「鏡くんっ、あっ、ん」

 無意識のようなのに、中は思っていたよりずっとやらしい動きをして、

 俺のに吸いついてくる。

 もっと欲しいと言われているようで、俺は少し強めに突き上げた。

 「ああっ!」

 そのままの強さで、スピードをあげる。

 「詩生。詩生の中、すごくいい…」

 繋がった部分が、感じてたまらなくなってくる。

 もうすぐイってしまうと思った俺は、

 「詩生、気持ちいい…詩生は?」

 「僕も、い…いっ」

 聞きながら、詩生のモノを握って、それを扱いた。

 「あ、ああっ!」

 彼が、背中を仰け反らせる。

 次の瞬間、詩生がイって、その強い締め付けに俺も達した。

 詩生のモノが勢いよく俺の手に精を放ち、俺のも中で弾けて脈をうつ。

 

 

 なんだかすごく嬉しい気持ちで、詩生と少し横になった後、

 俺は詩生の中に出した自分の精液を、指を入れてかき出した。

 ネットで仕入れた知識によると、そうした方がいいらしいのだ。

 そうしつつ、ふと思いついて前立腺も刺激したら、

 「あ、んっ…やあっ」

 四つん這いの格好の詩生が、白濁がついたままの尻を振って、体をビクつかせる。

 その光景を見たら、また勃ってきてしまって、俺は指を引き抜き、

 詩生のそこへと自分のモノを押し付けた。

 「え…鏡くん?」

 詩生がそのままの姿勢で、驚いたように振り返る。

 「ごめん、詩生。我慢できない。もう一回。もう一回だけ」

 言い終えると同時に、詩生の返事を待たずにグッと力を込める。

 「あっ、ああっ」

 詩生が声をあげて、それを聞いたらますます興奮した。

 詩生のそこが、俺のモノを飲み込んでいく。

 「ゆっくりする。ゆっくりするから」

 詩生の体を後ろから抱きしめて、耳元で囁きつつ、力を入れて少しずつ奥へと進入する。

 少し引き抜いては、また奥へ…

 グッグッと押し入れると、

 「あっ、んっ、鏡くんっ」

 背中を反らして詩生が俺の名を呼び、俺が前に回して抱きしめた手で乳首をつまんだら、

 「んっ」

 詩生の中がキュッと締まった。

 「詩生、いいの?」

 「ん…」

 詩生が恥ずかしそうに、でもちゃんと小さく頷いて答えてくれて、

 もう愛しくてかわいくてどうしようもなくなってくる。

 俺は、奥まで入れたモノを一度引き抜いた。

 「あっ」

 驚きと、どこか物足りなさを訴える声が聞こえる。

 俺はもう一度自分のモノを詩生の後ろの孔に押し当てた。

 そのままゆっくりと押し入れ、最奥まで貫く。

 「ああっ」

 ググッと突き上げるようにして詩生の中を自分のモノで満たした後、

 俺はまた抜けないギリギリのところまで引き抜き、同じようにして最奥まで挿入した。

 俺のモノと詩生の中が、なるべく長く擦れ合うように、

 何度もゆっくりと出し入れを繰り返し、

 俺のモノに吸い付き絡みついてくる詩生の中を味わう。

 そうしながら、前に回した手で乳首をいじってやると、詩生の体はガクガクと震えた。

 「ハッ…ああっ」

 詩生の中が、どんどん熱を帯びてくる。

 「詩生、気持ちいい。…ごめん」

 ゆっくりするって言ったけど、駄目だ。気持ちよすぎて…

 俺は、体を起こして詩生の腰を掴むと、繰り返していた抽挿のスピードを少しずつ上げた。

 「ハッ、あっ、あっ、鏡、くんっ、ダメぇっ」

 「ごめん。我慢できない」

 摩擦から生まれる快感が、背中を駆け抜けて、

 俺はこらえきれずに詩生を繰り返し激しく突き上げていた。

 「あっ、んっ、あっ」

 詩生の小さな体が、俺の下で揺れている。

 突き上げる度に、体が蕩けてしまいそうな気持ちよさが背筋を駆け上がり、

 次第に頭が痺れたようになってくる。

 「鏡くん!ああっ、イくっ」

 詩生が叫んで、今までにない強さで俺を締め付けた。

 たまらず、俺も詩生の中に、熱い迸りを注ぐ。

 体を倒し、首筋に口付けて、

 「詩生…詩生。愛してる」

 詩生の体を力いっぱい抱きしめる。

 もう離さない。誰にも渡さない。決して。決して―

 

 

 その後、詩生はぐったりとして動けなくなくなってしまい、

 俺はそんなにも疲弊させてしまったことをすっげぇ後悔した。

 大事にしたいと思っているのに、優しくすると決めていたのに、

 なんであんなふうに抱いてしまったのか、と自己嫌悪に陥る。

 「ごめん、詩生。次はもっと優しくするから」

 心の底から反省しながら、詩生の髪を撫でる。

 詩生が、ちょっと睨むようにして言った。

 「もう、鏡くん、激しい」

 その口調に急速に心配になって、

 「俺のこと…嫌いになってない?」

 恐る恐る聞くと、詩生は疲れた顔にそれでも笑顔を浮かべて、

 「なってないよ」

 と答えた。

 俺は嬉しくて、詩生の頬にキスをする。

 それから足を絡めれば、同じぐらいの位置に膝が、足の甲が、当る。

 詩生と同じだと思えば、この小さな背もそう悪くないかもと思えてくる。

 そして、背は小さいけど、俺は元気だ。

 元気で、健康で力もあって…

 だから、俺は、詩生のそばで、ずっと詩生を守り続ける。

 

 

                第二話「出会い」                了

 

 

 

 

 

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