ライク ア バトル3 後編


 「気づいたわけじゃなかったんだな」

 怒るのを通り越してしまったようで、逆に物凄く冷静な様子で、

 「もう、いいよ」

 四朗が薄く笑って言いながら、

 「気づいてくれたんじゃないなら、これもいらない」

 時計を外してケースに戻す。

 いったいどうしてこうなってしまっているんだろう。

 昔浮気した相手は登場するわ、五周年に全然気づいてないことを責められるわで、

 俺いいとこなしじゃん。

 さっきまでいい雰囲気だったのに。

 これではなんの為に頑張って働いて、今日のデートをセッティングしたのやら…

 そこまで考えて、その考えを振り払う。

 いや、そんなことはどうだっていい。

 いらないと言われたのは、心からショックで、とにかくそれだけは撤回してもらいたくて、

 俺は四朗を真正面から真剣に見つめて、謝った。

 「俺が悪かったっ。もうこれから浮気しないからっ」

 それを聞いた四朗が、渋い表情をする。

 「…俺はどうやってそれを信じればいいんだよ」

 疲れたように口にする奴に向かって、勢いよく頭を下げる。

 額がテーブルに当って、ゴンッと音をたてた。

 「もう一回っ!もう一回だけ信じて欲しい」

 「……」

 「お前がいたから、俺は安心して浮気できたんだ。

 一番に四朗がいて、帰るところがちゃんとあったから…」

 俺が様子を窺うように顔を上げ、四朗を見ると、

 奴は俺と目を合わせた後視線を落として、首を横に振った。

 「そんなの、分かんねぇよ。都合のいい言い分としか思えない。

 今までどんだけ裏切られてきたと思ってんだよ」

 静かに、そして少し悲しげに言う。

 「俺の方から好きになって、俺は今だってヤっちゃんのこと好きだけど…。

 だから浮気されても今までは許してきたけど、もう暮らし始めて五年だし、

 俺以外にフラフラ目が行くような男に、いつまでも振り回されてていいのかって、最近考えるんだ」

 「四朗…」

 その言葉に、なんかホロッと来て、こっちまで悲しくなった。

 なんでこんなかわいい奴を、俺は裏切って、悩ませてんだ?

 俺か?本当に俺が裏切ってんのか?

 「四朗…俺は惚れっぽくて、しょうがない奴だけど」

 四朗がそれを聞いて、眉間にしわを寄せる。

 「軽く言うなよ。病気、だろ。病気」

 う。俺は言葉に詰まった。

 弱々しい感じで喋っていたくせに、そんなところだけはキッチリ訂正してくるんだな。

 と思ったけど、指摘された通り言い直して、俺は続けた。

 「びょ…病気かも知れないけど、四朗がいなきゃ駄目なんだ」

 後半は、普段なら絶対言わない言葉だったが、思い切って口にした。

 だけど、四朗は顔を歪めて、

 「…安っぽいよ」

 ポツリと呟いて、聞き入れられないという感じでふいっと目を逸らす。

 俺は、また言葉に詰まり、黙った。

 じゃあ、どう言やぁいいんだよ。

 沈んだ雰囲気が漂い、マジで終わるのかも知れないという危機感に襲われかけたとき、

 四朗が入り口の方に目をやって急にポカンと口を開け、俺は怪訝に思ってそっちを見た。

 スーツ姿の男が二人、こちらに向かって歩いてくる。

 四朗が立ち上がって、片方の男に「緒方さん」と呼びかけた。

 相手も気づいたらしく、「おお」と声をあげ、それから挨拶を交わしている。

 どうやら、知り合いらしい。

 こんなに次々知り合いに会うなんて、どんな店だよ。

 俺は、この店を紹介してくれた奴にちょっと文句を言いたい気分になりつつ、二人の様子を窺った。

 会社関係の知り合いなのだろう。

 四朗が少しはにかむような表情を見せている。

 緒方と呼ばれた男は、話しながら途中で俺に視線を寄越してきて、

 その意味ありげな感じはあまりいい気がしなかった。

 なんだよ。

 少し睨むように見返したが、表情を変えないまま視線を四朗に戻す。

 会話にきりがついて、緒方が別のテーブルに案内され席につくと、

 四朗が俺の手を掴んで引っ張った。

 「ヤっちゃん、もう出よう」

 「えっ。でも、まだコースの途中」

 「いいから」

 何かマズいことでもあるんだろうか。

 四朗に強引に立ち上がらされ、勘定を済ませて店を出る。

 人で賑わう街中を、あてもなく歩き始めながら、四朗に聞いた。

 「誰だよ、あいつ」

 「…会社の先輩」

 そんなことは想像がつく。

 どうしてあいつが来たら、店を出なければならないのか、それが聞きたいのだ。

 「俺…実は、緒方さんに口説かれたことがある」

 「えっ」

 俺の要求は叶えられ、四朗が口にしたその内容に、俺は驚いて足を止めた。

 四朗も足を止める。

 「いつ」

 「ヤっちゃんが、二ヶ月間家を空けてたとき」

 それを聞いて、さっきの緒方の、俺を見る視線を思い出す。

 どうりで…あいつもその種類の人間だったのか。

 四朗が誰かに言い寄られた話なんて聞いたのは、これが初めてだった。

 だけど、よく考えてみれば、俺がこんだけかわいいと思うんだから、

 他にも思う奴がいたって全然不思議じゃない。

 本人が言わないだけで、ひょっとしたら、そんな話はもっとあるのかも知れない。

 「で、どうしたんだよ」

 続けて質問すると、四朗が笑う。

 「断ったよ。つきあえないって。でなきゃ、今こうしてヤっちゃんと一緒にいないだろ」

 俺は四朗をじっと見つめた。

 そりゃ…。もしOKしてたら、俺はとっくに捨てられて…

 今ごろ四朗の隣には、あいつがいたんだろう。

 ……。

 こんな不誠実な俺なのに、しかもケンカ中で憎らしかっただろうに、

 それでも俺のことを考えていてくれたのだろうか。

 「四朗…」

 なんかすごく悪いことをしたような気分になるのと同時に、愛しい気持ちが湧いてきて、

 見つめ続けていたら、奴が、少し照れたような怒ったような複雑な顔をして横を向いた。

 これを…こんなかわいいのを、手放せるわけがない。

 俺は、四朗の腕を掴んで、建物と建物の間の小路へと引っ張り込んだ。

 そして、奴に向かって深々と頭を下げる。

 「今までのことは謝るっ。全部俺が悪かったっ。もう浮気はしないし、

 お前がして欲しいこと、なんでもするっ。掃除機だってかけるし、お前の言うことなんでもきくっ。

 だから、別れないでくれっ」

 四朗の反応を待っていると、しばらくして少し笑いを含んだような声で、

 「…掃除機は…別にいいよ、かけなくても。

 あの時はイライラして思わず言っちゃっただけだから。ただ、浮気は本当にやめて欲しい」

 そう聞こえて、俺は顔を上げた。

 「じゃあ…」

 期待を込めて四朗を見ると、小さく頷く。

 「…もう一回。もう一回だけ信じてみる。でももう次はないからな」

 しょうがないなという表情で笑みを浮かべる四朗を見て、

 「やったっ」

 たまらなく嬉しくなって、抱き締める。

 「ちょっ、ヤっちゃん、苦しい」

 四朗は喚いたが、俺は盛り上がる気持ちを抑え切れず、抱き締める腕にさらに力を込めた。

 失くしかけて分かった。

 四朗は本当に俺にとってなくてはならない存在だ。

 と、そのとき、ある考えが頭をよぎってハッとし、離れて四朗の顔を見る。

 「お前、あの男がいる会社にいて大丈夫なのか?諦めきれずに、襲ってきたらどうすんだよ」

 俺の言葉に、四朗は笑った。

 「大丈夫だよ。もう話はついてるんだし、彼は紳士だから。誰かさんと違って」

 俺は、固まって、ちょっとムッとした。

 一言多いぞ。

 「…悪かったな。紳士じゃなくて」

 四朗が笑いつつ困ったようにする。

 「いいんだよ。ヤっちゃんは、ヤっちゃんで」

 そう言った後、俺の全体を眺めるようにして、続けた。

 「でも、たまには違うヤっちゃんもいいかも」

 ちょっと甘えているような、誘っているような表情で俺を見る。

 「ヤっちゃん。…スーツ、カッコいい」

 急にそんなことを言われ、自分の着ているものを見下ろし、

 「え。そ、そうか?」

 照れ臭くて笑ったら、四朗も同じようにして、それから唇を寄せてきた。

 え、こんなところで?

 見られないとも限らない場所なので、一瞬そう思ったが、

 さっきからトキめきまくっている俺に拒むことなど出来るわけがなく、

 吸い寄せられるように唇を合わせてしまう。

 唇で四朗の唇の柔らかさを味わうように、包むようにしてから舌を差し入れた。

 舌が触れ合うと、お互いに積極的に絡め合う。

 「んっ、…ふっ」

 四朗が色っぽい声を漏らし、俺はたまらなくなって来て一旦離れた。

 「四朗、どっか行かね?」

 提案すると、奴が「うん」と頷く。

 「行こう」

 俺は、四朗の手を取って通りに出ると、足早に歩き出した。

 

 

 上着を脱ぎ、四朗をベッドに誘って、ゆっくりと押し倒し、上に乗って唇を塞いだ。

 媚薬を飲んだとき、いつもと逆で俺が四朗に掘られたわけだが、

 あれから結局ヤる時は俺がまた前と変わらず上になっていた。

 大抵ヤりたくなるのは俺の方で、俺が迫って、

 その勢いで四朗を組み伏せてしまうので、自然とそうなるのだ。

 四朗の口の中を蹂躙しながら、ネクタイの結び目に手をかけて緩め、それを外す。

 「んっ、んっ」

 四朗が、喘ぎ声をあげつつ、俺の背中に手をまわし、強く抱きついてくる。

 唇を塞いだまま、シャツのボタンを外して前を開き、

 乳首に指先で触れたら、四朗の体がビクッと揺れる。

 それを押したり転がしたりした後、硬く尖って存在を主張し始めたところで

 力を込めてグッと押した。

 「んぁっ」

 四朗が声を上げて離れた唇を、もう一度塞ぎ、コリッコリに硬く立ち上がったそれを、

 摘んで引き上げながらつねるように力を加えると、

 「んっ!…ふっ」

 背筋を反らして身悶えた。

 「やっぱいいな。四朗の体は」

 唇を離し、いつも口にする台詞を口にして乳首に顔を寄せ、それを口に含んだ。

 「ああっ」

 硬い先端を舌で弾きつつ、ズボンの中に手を滑りこませれば、

 それはもう大きくなって下着を濡らしていた。

 このまま乳首を弄り倒したい気もしたけれど、

 「ヤっちゃん、俺、もう」

 四朗は耐えられないようで、懇願するように俺を見てきて、仕方なく胸から顔を上げた。

 奴のベルトを外し、ズボンと下着を下ろして、足から抜き取る。

 半勃ちになっているそれに顔を寄せ、口に咥えたら、

 「んっ」

 完全に勃ち上がってきた。

 時間をかけてペニスに舌で丁寧に愛撫を施してやってから、深く咥えこみ、

 徐々に唇を上下させる速度を上げたら、

 「あっ、あっ、も、イく」

 四朗の体がビクッと揺れて、俺の口の中に白濁を放った。

 それを嚥下して、達した感覚に身を委ねている四朗の口に、

 「咥えろよ」

 俺は、右手の中指と人差し指を入れ、口内に触れて唾液で濡らした。

 それから四朗の足を開いて尻に左手を持っていき、キュッと硬く閉じたすぼまりを、

 指で左右に押し開く。

 外気に晒されて、ヒクヒクと物欲しそうに震えるソコに、

 右手の中指だけを押し当て、先端を挿し込む。

 「んっ」

 力を込め、奥まで沈めると、四朗の柔らかくて暖かい中が、俺の指を飲み込み、包みこんでいく。

 「あ…んん」

 再び緩く経ち上がってきた前に手を伸ばし、握ってやると、中が指を締め付けた。

 顔を奴の耳元に寄せて、

 「たとえ四朗が俺を嫌いでも、俺は四朗を離さねぇよ」

 そう呟いて、指を出し入れしてそこを解し、頃合を見計らって指を増やす。

 固く、狭くなっている中を、二本をグッと押し込んで開いていく。

 「んっ、ふ…」

 これまで、四朗に他の男の影を見たことがない。もちろん女も。

 自分のことは棚に上げといて言うが、そんな身持ちのいいところも、すっげぇ好きだし愛しく思える。

 ゆっくりと指の出し入れを始め、

 「四朗は信じないかも知れねぇけど、嫌かも知れねぇけど、俺がこの世で一番好きなのは四朗だから」

 引き続き耳元で囁くようにすると、四朗の中が、指をキュウキュウ締め付けてくる。

 感じているのか、息遣いも次第に荒くなってきた。

 「いい……から、さっさと挿れろ」

 快感を必死に堪えている声で言う四朗のモノの先端から、透明な汁が溢れ始める。

 俺は、十分に解れたところで指を引き抜いて、下を脱いだ。

 とっくにビンビンに勃ち上がっていた自分のモノを、そこに押し当て、

 グッと腰を落として四朗の中に入っていく。

 抜き差しを繰り返し、最奥まで進めて、腰を振り始めると、

 「あっ、んっ、ああっ」

 四朗の中が俺のをいつものように、奥深くでうねる様な動きで締め付けてくる。

 突き上げるたびに、

 「はっ…ああっ」

 その口から喘ぎ声が漏れて、俺はそのエロい唇に自分の唇を合わせた。

 「んっ、んんっ」

 四朗の口の中とかわいさを味わいながら、抽挿を激しくすると、やがて中がビクビクと震え始めた。

 「ヤ、ヤっちゃん、もう」

 「いいぞ、イって」

 四朗の中が、さらに俺のを締め付ける。

 「あっ、ああっ」

 次の瞬間四朗が達し、その動きに俺も射精を促され、熱い精を四朗の奥へと放った。

 

 

 後始末をして、ことの余韻に浸っていたら、

 「ヤっちゃん、俺の言うことなんでも聞いてくれるって言ったよね」

 四朗が念を押すように言って、俺は奴の方へ顔を向けた。

 「言ったけど…なんだよ」

 「もう一回したい。今度は俺が上で」

 「えっ」

 まさか、四朗がそんなことを言い出すなんて考えてもいなくて、ビックリした。

 もう、それは望んでいないものだと勝手に決めつけていた。

 「そ、それは」

 出来れば遠慮したいと思い、言葉を探していると、

 「あれ、なんでも言うこと聞くって言ってなかったっけ」

 四朗が、じとっとした目で見てくる。

 確かに言った。

 でも、すんなり承諾する気にもなれなくて、黙っていたら、

 だんだん俺に向けられる視線が、責めるようなキツイものになってきた。

 「わ、分かったよっ。どうとでも好きにすればいいだろっ」

 腹を括って腕組みをする。

 もう掘られているのだし、一回も二回もいっしょだ。

 そんな俺を見てフッと笑い、四朗が聞いた。

 「縛ってもいい?」

 「は!?」

 思ってもみなかった言葉に四朗を見ると、いつの間にかその手にネクタイを持っている。

 「今日は媚薬も飲んでないし、ヤっちゃん、今はしおらしいこと言ってても、

 いざとなったら嫌がるかも知れないし。抵抗されたら、俺、ヤっちゃんには勝てないから」

 「……逃げたりしねぇよ」

 「分かってるけど、一応。手だけでいいから」

 「……」

 その場の雰囲気から、なんか拒みきれず動かずにいると、四朗が俺を押し倒し、上に乗って、

 俺の両手を頭の上に持っていった。

 ネクタイで両手首を重ねて縛る。

 そして、顔を寄せると唇を塞いできた。

 「んっ」

 下は脱いでいたが、ワイシャツは着たままの俺の腹辺りをさするようにして、

 手を裾から差し入れてくる。

 胸に向かって伸びた手が乳首を弄び、口の中では舌と舌が滑り合い、

 その両方の感触が気持ちよくて、

 「んっ、フッ」

 俺のモノは次第に勃ち上がってきた。

 これから挿れられるのだと思ったら、前の時の感覚が甦って、体の芯も熱くなってくる。

 「興奮してる?」

 「し、してねぇよ」

 唇を離した四朗が聞いてから、俺のモノを握ってきた。

 「はっ」

 体がビクッと揺れる。

 「だって、もうこんなになってる。…挿れて欲しい?」

 「べ、別に」

 顔を背けて言いながら、でも、体はそう望んでいるのか、握られた先端から先走りが溢れ始めた。

 「ふーん?」

 四朗が面白がっている表情で俺を見下ろし、指を自分の口に咥えて濡らして、俺の尻へと持っていく。

 指がソコにあてがわれるのを感じ、俺が覚悟を決めるのと同時に、それが押し込まれた。

 後ろが指を飲み込んでいく感覚に、顔を歪めて、

 「気持ち悪ぃ…」

 呟くと、四朗が

 「すぐに慣れるよ」

 と言って出し入れを始める。

 屈辱感はあったが、考えないことにした。

 今日は、四朗の好きにさせる。

 四朗が指を増やし、慣れていない俺のことを考えてか、

 時間をかけて解した後指を引き抜き、両足に手をかけた。

 後ろのすぼまりに四朗のモノが押し当てられ、目を瞑る。

 グッと力を込められ、

 「ひっ」

 入ってくる感覚に思わず声が出た。

 四朗がそのまま腰を進め、中を開いていく。

 少しずつ満たされていくのを感じ、声が出そうになるのをこらえていると、

 やがて四朗の声が聞こえた。

 「ヤっちゃん、入った」

 尻に四朗のが根元まで入っていて、体を広げられているその感覚に、

 じわじわと中が熱を帯びてくる。

 「媚薬飲んだとき、最後の方で『中に出して、奥にかけて』ってねだったの、覚えてる?」

 四朗が耳元で囁き、俺は、それを聞いて唖然とした。

 あー、そりゃ、もう意識飛んでたわ。

 「覚えてねぇ」

 「あれ、すっげぇ感じた。ヤっちゃんがものすごくかわいく思えた」

 四朗のことは、いつもかわいいと思っているが、自分が言われたら妙に照れ臭い感じがして、

 「バカ。かわいいとか言うな」

 俺は、四朗を睨むようにした。

 すると、奴が腰をグッと動かして、

 「んっ」

 奥を突いてきて、たまらない感覚が体を駆け抜ける。

 「う…ごかすな…っ」

 俺が目をつぶって呻くと、四朗はくすっと笑った。

 「今からもっと動かすよ?」

 そう言い置いて、言葉通りゆっくりと抜き挿しを始める。

 「あっ…ヤだ…んっ」

 足を思いっ切り開いた格好でそこを突き上げられ、次第にスピードが上がって来たら、

 「はあっ、んんっ」

 自分の声とは思えないような喘ぎ声が出てしまった。

 「ヤっちゃん、いいよ。もっと感じて」

 俺の中と四朗のモノが擦れあい滑り始めると、背筋をゾクッとする快感が駆け上がる。

 「ああっ」

 「俺、ずっと挿れられる側だったから、今ヤっちゃんがどんな風に感じてるか、

 すごくよく分かる。どうされたら感じるかも」

 四朗はそう言うと、ペニス側の上の方を擦り上げるようにして奥まで中を、一気に貫いた。

 「うあっ、ああっ」

 「ヤっちゃん、イきそう?俺も…イく」

 四朗が言って、もう一度最奥をズンッと穿った。

 次の瞬間、奴のモノが中で弾け、熱い精を勢いよく放つ。

 すでにこれ以上ないほど密着している結合部を、

 もっと繋がろうとするようにグッグッと押し付けて来て、

 体の奥深くに向かって打ちつけられるように注がれるその感覚に、

 「あぁっ」

 感じて俺も白濁を噴き上げた。

 「はあ…はあ…」

 達して、その感覚に身を委ねていると、四朗がおもむろに俺のペニスを掴んだ。

 「え。ちょっ」

 何してんだと言おうとしたが、すぐに握った手が上下に動き始めて、ビクッとなる。

 「あっ!こらっ、まだイったばっかなのに…はっ…ああっ、バカッ」

 媚薬を飲んだときのような、脳天まで駆け上がる刺激を感じて、

 中が入ったままの四朗を締め付けた。

 背筋がゾクゾクしてたまらない。

 目尻に涙が浮かんで来て、

 「も、おかしくなるっ。これ、解けよっ」

 必死に抵抗しようとしたが、何しろ縛られているのでどうにもならない。

 「あっ、あっ、四朗っ」

 四朗は解く気などないようで、しごく手のスピードをあげて、

 俺はもうなにがなんだか分からなくなってくる。

 俺の中の四朗のモノが復活してきて、奴がゆっくりと抽挿を始めた。

 その大きさと硬さを、やけにはっきりと感じる。

 硬いモノが最奥を穿ちながら抜き差しされ、前も同時にしごかれ、

 摩擦によってどんどん気持ちよさが生まれてくる。

 腰が強い疼きに包まれ、

 「やあっ、も…うっ、あっ、はっ」

 頭が痺れ、涙が次から次へと溢れ出て、こめかみを伝って流れ落ちていく。

 「ヤっちゃん、気持ちいい?」

 「ふっ、うっ」

 体がビクビクと震え始める。

 「うっ、んっんっ」

 いつの間にか唇が合わさっていて、差し入れられた四朗の舌と舌が触れ合うと、ゾクッとした。

 そのまま口内を攻められ続け、乳首に触れられ硬くなったそれを指で転がされた瞬間、

 俺のモノは弾けて精液を放った。

 四朗も、達して俺の奥へと再び勢いよく白濁を注ぐ。

 「はあ…ああ…」

 体から力が抜け、ぐったりとしている俺の中から、四朗が自分のモノを引き抜き、

 続けてゆっくりと縛っていたネクタイを外した。

 そのネクタイを束ねて横に置きつつ、

 「五年かかって、やっとヤっちゃんが俺のモノになった気がする」

 四朗が感慨深げに俺を見て、嬉しそうに言う。

 俺はもう、放心したようになって、動くことも出来なかった。

 

 

 その後。少し休憩してから、家に帰った。

 「それ、もらってもいいんだよな」

 四朗から返された腕時計を鞄から出して、テーブルに置いたら、四朗が聞いてきた。

 「ああ」と頷くと、手にとって腕につける。

 じっとそれを見つめる表情を読み取れば、気に入ってくれているようだ。

 四朗が顔を上げて、俺を見る。

 「あと五年したら、今度は十周年で、俺がなにかセッティングするよ」

 笑って言ったが、あと五年後なんて、俺にはものすごく先のことに思えた。

 「ま、ヤっちゃんの病気が発症しなかったら、の話だけど」

 そう言われて苦笑する。

 もう、俺にはこのまま四朗と暮らし続ける以外の将来なんて考えられないし、

 もちろん気をつけるつもりではいるけれど、実際どうなるかなんてことは、自分でも分からなかった。

 なにしろ、俺は惚れっぽい…どころじゃなく、『病気』だったりするのだから。

 

 

 

                                     了

 

                                 
2011.05.15
                                    ライク ア バトル4へ

 

 

 

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