東山の森不動産・補償コンサルタント

補償業務管理士試験(共通科目)の過去問の分野別解説テキストの学習方法



(1)平成20年度〜令和4年度分までの過去問解説テキストを発売中




(2)令和5年(本年)度本試験問題(共通科目・単年度版)の解説(データ配信)を発売中



(3)CPD 「−ラ−ニングシステム」学習用コンパクト解説版(発売中)




「補償業務管理士試験(共通科目)の過去問の分野別解説テキスト」の学習方法



《テキストの効果的な学習方法について》

 学習目標としては、本テキストを3回まわしてください。内容的には、まず各肢それぞれの細かい知識よりも、本試験で、「この肢は正しい、又はこの肢はどうもおかしい(誤っている)」というが身につくようなおおざっぱな学習から始めてください。本試験は4肢択一で、しかも合格点も6割ですので、試験に必要とされる知識も、完全に正確なものでなくとも、4肢のうち、正しそうなもの、又は誤ってそうなものを一つ嗅ぎ分けるための基礎的知識獲得から始めてください。もちろんこれで十分とは言いませんが、まずはその辺から始めるのがベターなのかなと思っています。そのため、上記のを養うために、本テキストを3回読んでください。

 とはいえ、本テキスト(270.P)を通読するのも、それはそれでかなり大変じゃないかと思われるかもしれません。しかし、本テキストは内容的には実質半分程度しかないのです。その理由は、以下の学習方法での中で説明します。とにかくだまされたと思って、本テキストをまず1回通読してください。そうすれば、2回目、3回目が読みやすくなるはずです。

 なお、当コンサルでは、各地で本テキストを使った講習会及び通信講座開催していますが、講習会等の目的は、本テキストをより理解しやすく、より読みやすくするためのものです。特に、土地収用法、税制、一般補償基準、公共補償基準には、それぞれその分野を理解するための(きも)となる部分(各項目を理解するための基本的部分・ポイント・コツ)がありますので、その部分を重点的に講義等しています。機会があればぜひ参加してください

 さて、これから平成H28年度第10問を例に、本テキストを使った効率的な学習方法を説明します。

【H28 問10】 収用委員会及び収用審理に関する記述のうち、妥当なものはどれか。

1.(○) 収用委員会は、都道府県ごとにおかれている行政委員会で委員7名により組織され、予備委員を2人以上置かなければならない。また、委員及び予備委員の任期は3年で、都道府県の議会の同意を得て、都道府県知事が任命する。※(収用法第52条第1項〜第3項,第53条第1項)  H25-11-4、H22-9-2、H20-11-1

2.(×) 裁決申請があった旨の通知を受けた市町村長による2週間の縦覧が終了し、収用委員会により裁決手続開始の決定がなされ、その旨が公告されたときは、起業者は、申請に係る土地を管轄する登記所に収用又は使用の裁決手続開始の登記を嘱託する。※(裁決手続開始の登記を嘱託するのは、起業者ではなく収用委員会である。:収用法第45条の2) H27-10-4,H24-7-3、H23-11-2・4,H20-6-4,H20-12-1

3.(×) 収用委員会の審理は原則公開しなければならないが、起業者、土地所有者及び関係人から請求があった場合は非公開としなければならない※(収用委員会は、審理の公正が害される虞があるときその他公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。起業者等からの請求の有無に左右されるわけではない。収用法第62条) H30-11-4、25-11-1、H22-9-1、H21-11-2、H20-11-2 

4.(×) 土地所有者及び関係人は、収用委員会の審理においては、事業の認定に対する不服以外の事項であれば、新たに意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができる。※(提出済みの意見書に記載している事項を説明する場合又は損失の補償に関する事項に限って、意見を述べることができる。なお、事業の認定に対する不服に関する事項その他の事項であって、収用委員会の審理と関係がないものを意見書に記載し、又は口頭で意見を述べることは、収用裁決の審理の段階では当然できない。:収用法第63条第3項) H30-11-2、H29-10-3、H21-10-3


(1) まず、(肢の1)を読みます。

1.(○) 収用委員会は、都道府県ごとにおかれている行政委員会で委員7名により組織され、予備委員を2人以上置かなければならない。また、委員及び予備委員の任期は3年で、都道府県の議会の同意を得て、都道府県知事が任命する。※(収用法第52条第1項〜第3項,第53条第1項)  H25-11-4、H22-9-2、H20-11-1


(2) 本肢は正解の肢である。正解の肢については、本文を読んで、ある程度正誤が判断できる内容ならば、それ以上他の解説等は読まなくても結構です。そのため、本テキストも、正解の肢については説明を最小限に抑えて、参照の条文や参照のテキストの箇所を示しているだけです。正解の肢を素直に読んで理解するようにしてください。余分な知識は無用なので、基本的には条文やテキストを参照する必要もありません。他の解説等を読むとかえってこんがらかったり、難しくなります。本肢の内容がちんぷんかんぷんの場合に、はじめて参照箇所を検討する方がいいと思います。


(3) 次に解説の後ろにある過去問の類題3題(H25-11-4〈平成25年第11問肢4〉、H22-9-2〈平成22年第9問肢2〉、H20-11-1〈平成20年第11問肢1〉)を検討します。類題を見ると過去に同じような問題が出題されていることがわかります。下記の3問について、それぞれの過去問の箇所を見れば、それぞれ出題の仕方や傾向がわかります。こうすれば割と簡単に、関連する過去問の肢を3つ学習できます。みなさんもご存知のように、過去問には同じようなものが何回も出題されています。そのため本テキストのボリュームが全体270.Pといっても、実際は重複もあり、内容的には半分程しかないのです。実際下記の3問の過去問を見てください。

(H25-11-4).(×) 収用委員会は、委員7人をもって組織し、1人以上の予備委員を置かなければならない。※ (「2人以上」の予備委員必要(法第52条第1項及び2項) H28-10-1、H22-9-2、H20-11-1

(H22-9-2).(○) 収用委員会は、委員7人をもって組織し、2人以上の予備委員を置かなければならない。※(法第52条第1項・2項)     H28-10-1、H25-11-4、H20-11-1

(H20-11-1).(×) 収用委員会は、委員9人でもって組織され、委員は、法律に関してすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから、都道府県議会の同意を得て、都道府県知事が任命する。※(「7人」の誤り。:「法律、経済又は行政」の誤り。法第52条1項・3項) H28-10-1、H25-11-4、H22-9-2


(4) 続いて、(肢の2)を読みます。

2.(×) 裁決申請があった旨の通知を受けた市町村長による2週間の縦覧が終了し、収用委員会により裁決手続開始の決定がなされ、その旨が公告されたときは、起業者は、申請に係る土地を管轄する登記所に収用又は使用の裁決手続開始の登記を嘱託する。※(登記を嘱託するのは、起業者ではなく収用委員会である。:収用法第45条の2) H27-10-4,H24-7-3、H23-11-2・4,H20-6-4,H20-12-1


(5) 誤りの肢の解説もなるべくコンパクトにしてあります。もちろん、難しい問題については、それなりに詳しい解説をしているところもあります。なお、解説を読んで理解できれば、それで十分ですが、理解ができないところは、参照条文や参照テキスト等を読んでじっくり検討してください。

(ここで手前味噌になりますが、講習会等の参加者はテキスト等を調べる必要はありません。なぜなら、講習会等の参加者にはもれなく、メール又は携帯で著者に何時でも、どこででも、何回でも質問できる特典があるからです。本試験の前日までは、受講者の方はいつでも参考書代わりに、著者に質問できます。)


(6) 次に、解説の後ろにある過去問の類題6題(H27-10-4,H24-7-3、H23-11-2・4,H20-6-4,H20-12-1)を検討します。これで関連する過去問の肢を6つ学習できます。

(H27-10-4).(○) 収用委員会は、裁決申請書の縦覧が終わった後、裁決手続開始の決定を行い、その旨を公告し、申請に係る土地を管轄する登記所に、その土地及びその土地に関する権利について、収用又は使用の裁決手続の開始の登記を嘱託しなければならない。※(法第45条の2。収用委員会による裁決手続開始の決定及び裁決手続開始の登記の嘱託) H28-10-2、H24-7-3、H23-11-2・4,H20-6-4      

(H24-7-3).(×) 裁決の申請→ 裁決申請書の縦覧→ 裁決手続開始の決定・裁決手続き開始の登記 → 収用委員会審理;補償金の支払い権利取得裁決・明渡裁決※(補償金の支払いと権利取得裁決・明渡裁決の順序が逆。権利取得裁決・明渡裁決によって補償金の額が決まる。その後に補償金を支払うことになる。) H28-10-2、H27-10-4,H24-7-3、H23-11-2・4,H20-6-4,H20-12-1

(H23-11-2・4)2.(○) 収用委員会が受理した裁決申請書及びその添付書類の写の送付を受けた市町村長は2週間その書類を公衆の縦覧に供しなければならない。※(法第42条第1項・2項) H24-7-1,H21-10-2

4.(○) 収用委員会は、裁決申請書の縦覧が終わった後、裁決手続開始の決定を行い、その旨を公告し、かつ、申請に係る土地を管轄する登記所に収用又は使用の裁決手続の開始の登記を嘱託しなければならない。※(法第45条の2) H28-10-2、H27-10-4,H24-7-3、H20-6-4,H20-12-1

(H20-6-4).(×) 裁決手続開始の登記があった後において、当該登記に係る土地の所有権を売買で取得した者は、その権利を起業者に対抗できる※(対抗できない。登記の時点で権利者が固定されるので、対抗できない。:法第45条の3第1項) H28-10-2、H27-10-4,H24-7-3、H23-11-2・4

(H20-12-1).(○) 起業者は、権利取得の時期までに権利取得裁決に係る補償金の払渡し又は供託をしないときは、権利取得裁決はその効力を失う。※(法第100条1項) H28-11-2、H20-12-4


(7)三番目に、(肢の3)を読みます。

 3.(×) 収用委員会の審理は原則公開しなければならないが、起業者、土地所有者及び関係人から請求があった場合は非公開としなければならない※(収用委員会は、審理の公正が害される虞があるときその他公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。起業者等からの請求の有無に左右されるわけではない。収用法第62条) H30-11-4、H25-11-1、H22-9-1、H21-11-2、H20-11-2 


(8) 肢の2と同様、誤りの肢の解説もなるべくコンパクトにしてあります。本肢の解説では、どういう場合に審理を非公開にできるかを簡潔に説明してあります。もちろん難しい問題についてはもっと詳しい解説をしているところもあります。解説で理解できれば、それ以上参照条文や参照テキストを読む必要はありません。


(9) 解説の後ろにある過去問の類題5題(H30-11-4、H25-11-1、H22-9-1、H21-11-2、H20-11-2)を検討します。これで関連する過去問の肢を6つ学習できます。

(H30-11-4)(〇) 収用委員会の審理は、公開しなければならないが、審理の公正が害される虞があるときや公益上必要なときは、公開しないことができる。※(用地取得と補償9版P137、4.3.5、収用法第62条) H28-10-3、H25-11-1、H22-9-1、H21-11-2、H20-11-2

(H25-11-1).(×)収用委員会の審理は、必ず公開しなければならない。※ (審理の公正が害される虞があるときその他公益上必要があると認めるときは公開しないこともできる;法第62条、「必ず」は怪しい。) H30-11-4、H28-10-3、H22-9-1、H21-11-2、20-11-2 

(H22-9-1).(×) 収用委員会の審理及び裁決の会議は公開しない。※(審理は公開しなければならない。:法第62条) H30-11-4、H28-10-3、H25-11-1、H21-11-2、H20-11-2 

(H21-11-2).(×) 収用委員会の審理は、個人の財産権に係る事項が中心となることから、常に非公開で行われる※(収用委員会の審理は、原則公開である。:法第62条第1項)) H30-11-4、H28-10-3、H25-11-1、H22-9-1、H20-11-2 

(H20-11-2).(○)収用委員会の審理は公開しなければならないが、収用委員会は、審理の公正が害されるおそれがあるときその他公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。※(なお、裁決の会議非公開。:法第62条) H30-11-4、H28-10-3、H25-11-1、H22-9-1、H21-11-2


(10) 四番目に、(肢の4)を読みます。

4.(×) 土地所有者及び関係人は、収用委員会の審理においては、事業の認定に対する不服以外の事項であれば、新たに意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができる。※(土地所有者等は、提出済みの意見書に記載している事項を説明する場合又は損失の補償に関する事項に限って、意見を述べることができる。なお、事業の認定に対する不服に関する事項その他の事項であって、収用委員会の審理と関係がないものを意見書に記載し、又は口頭で意見を述べることは、収用裁決の審理の段階では当然できない。:収用法第63条第3項) H30-11-2、H29-10-3、H21-10-3


(11) 肢の2及び3と同様、誤りの肢の解説もなるべくコンパクトにしてあります。本肢の解説では、収用委員会の審理において、土地所有者等が意見を陳述できる場合について説明してあります。解説で理解できれば、それ以上参照条文や参照テキストを読む必要はありません。


(12) 次に解説の後ろにある過去問の類題3題(H30-11-2、H29-10-3、H21-10-3)を検討します。これで関連する過去問の肢を4つ学習できます。

(H30-11-2).(〇) 起業者、土地所有者及び関係人は、裁決申請書の添付書類又は縦覧期間内に受理された意見書に記載された事項に限って審理で意見を述べることができるものであるが、  損失の補償に関する事項については新たに意見を述べることができる。※(用地取得と補償9版P137、4.3.5、収用法第63条) H29-10-3、H28-10-4、H21-10-3

(H29-10-3).(×) 土地所有者及び関係人は、裁決申請書の縦覧期間中に提出した意見書に記載した内容に関することであれば、収用委員会の審理において、事業の認定に対する不服を述べることができる。※(できない。収用委員会の審理の対象は「損失の補償」に関する事項である。「事業認定」に関する事項は、事業認定庁(国土交通大臣・知事)の専権事項であり、収用委員会の権限の対象外である。収用法第63条第3項) H30-11-2、H28-10-4、H21-10-3

(H21-10-3).(×) 起業地の存する市町村において裁決の申請があった旨の公告があったときは、 土地所有者は裁決申請書及びその添付書類の写の縦覧期間内に、収用委員会に事業の認定に対する不服に関する事項について、意見書を提出することができる。※(できない。事業認定はすでに確定している。また事業認定は委員会の権限外である。委員会の審理(損失補償)と関係がない事項についてはダメ。:法第43条3項) H30-11-2、H29-10-3、H28-10-4


(13) 以上のとおり、過去問学習をするときは、過去問の類題も一緒に検討してください。そうすれば理解が深まると共に記憶にも残ります。また、本テキストは270.Pありますが、この学習を通して、実質的には半分程度の内容しかないことがわかります。

 なお、本テキストは各肢をひとつずつ独立して解説していますので、まとまった学習時間がなくても、スキマ時間を利用して少しずつ学習を進めることができます。また、体系的に読む必要もありません。本テキストを3回まわせば、体系も自ずからわかってきます。そのため、本テキストを常に持ち歩いて読み込むようにしてください。本テキストはコンパクトで丈夫に製本されていますので、持ち歩くにも便利です。

 さあ、このテキストを十二分に活用して、来年度合格を勝ち取ってください。

 健闘を祈ります。


    総合補償士 森正隆