最近の収用事例

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3 R元年5月15日
沖縄県収用委員会平成28年1号事件

最近の収用事例(収用の現場からのレポート)



(東海4県・東京都・沖縄県・長崎県の最近の収用事例)


3 沖縄県収用委員会平成28年第1号事件の概要(損失補償における当事者主義及び使用期間の争点事案:平成28年2月10日申請、平成29年4月14日裁決)

(※説明の便宜のため、事例及び裁決書の内容を少し変更してあります。正確な内容を知りたい方は、ホームページの連絡先にお問い合わせください。)


(件名) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法に基づく使用裁決申請等事件( 嘉手納飛行場その2 )

起 業 者  沖縄防衛局長 中嶋浩一郎

(裁決申請及び明渡裁決の申立てに至った経緯等概要)

1 裁決申請理由

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和35年条約第6号。以下「日米安全保障条約」という。)に基づく日米安保体制は、我が国の安全保障の基軸であり、また、日米安保体制を中核とする日米同盟は、我が国の外交の基軸であり、多国間の安全保障に関する対話・協力の推進や国連の諸活動への協力など、国際社会の平和と安定への我が国の積極的な取り組みに役立つものである。

 日米安全保障条約に基づき日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)は、日米安全保障体制の中核をなすものであり、駐留軍の活動の基盤となる施設及び区域を円滑かつ安定的に提供することは、我が国の条約上の義務である。

 沖縄県に所在する駐留軍用に供するため土地所有者と賃貸借契約を締結して使用していた本件裁決申請対象土地(以下「本件土地」という。)については、施設及び区域の運用上他の土地と有機的に一体として機能しており、必要欠くべからざるものであることから、契約期間満了後も引き続き駐留軍の用に供する必要があるが、本件土地の所有者との合意により使用権限取得する見込みがないことから、やむを得ず、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和27年法律第140号。以下「駐留軍用地特措法」という。)に基づき使用権原取得することとして、駐留軍用地特措法第14条の規定により適用される土地収用法(昭和26年法律第219号。以下、駐留軍用地特措法第14条の規定により適用される土地収用法について、単に「土地収用法」という。)第39条第1項の規定により、平成28年2月10日、沖縄県収用委員会に使用の裁決の申請及び明渡裁決の申立て(以下「本件裁決申請」という。)を行ったものである。


2 使用の必要性

 現在、日米両政府とも日米安全保障条約を終了させることは考えておらず、駐留軍の駐留は、今後相当長期間にわたるものと考えられ、その活動基盤である施設及び区域も、今後、長期間にわたり使用されるものと考えられる。

 本件土地のある嘉手納飛行場は、沖縄市、嘉手納町及び北谷町に所在し、米空軍第18航空団管理の下、第18運用群、第18任務支援群、在沖米海軍艦隊活動司令部等の部隊が使用している施設である。本件土地は、施設及び区域として他の土地と有機的に一体として機能しており、必要欠くべからざる土地として、引き続き駐留軍の用に供する必要のあるものである。


(本事例のポイント 1 損失補償について) (※当事者主義を採用)

 本件土地の使用に対する損失補償について、当収用委員会は、土地収用法第65条による鑑定をさせた上、当該鑑定人の評価額(地代単価)と起業者の損失補償見積における地代単価を比較検討した。その結果、価格形成上の諸要因をより合理的に考慮し算定しているのは鑑定人の評価額であると認める。しかし、本件においては、起業者見積における地代単価当該評価額を上回るため土地収用法第48条第3項に基づき起業者見積における地代単価採用する。

 よって、採用した地代単価に面積及び使用期間を乗じて得た額を土地収用法第72条の規定により準用する土地収用法第71条における「相当な価格」と認定した上で、当該額に修正率を乗じて得た額をもって、本件土地の使用に対する損失補償額として相当と判断する。ただし、修正率が1未満の数値であり、修正率を乗じて得た額起業者見積額を下回る場合は、土地収用法第48条第3項の規定の趣旨から、修正率は考慮しないものとする。

 中間利息の控除率については、従前の使用裁決における控除率、近時の基準割引率・貸付率、銀行預金利率、土地その他の金融資産の利回り及び現在から近い将来にかけての経済情勢の客観的情勢等を総合的に勘案し、年0.25パーセントを相当と判断する。

 また、本件土地の暫定使用に対する損失補償については、駐留軍用地特措法第16条による暫定使用の時期の価格を、本件土地の使用に対する損失補償に係る前記算定方法と同様に算定した。


(本事例のポイント 2 使用期間について) (※起業者は、10年を申立て)

 本件土地の使用期間については、起業者の前記申立てに係る事情に加え、土地所有者が受ける不利益考慮して判断する必要がある。

 本件土地の使用に対する損失補償については、使用認定の告示の時における価格に固定される(土地収用法第72条)。また、土地の損失補償金の支払いは、権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに一括して支払いをしなければならず(土地収用法第95条第1項)、使用期間中は土地価格の改定がなされることもない。

 この状況を、契約により駐留軍に土地を提供している土地所有者の使用料1年ごと改訂され、1年ごとに支払いを受けていることと比較した場合、裁決申請対象土地の所有者は不利益な状態に置かれていると認められる。

 したがって、不相当に長期にわたる使用期間を認めることは、憲法第29条第3項及び土地収用法の趣旨に照らして妥当でない

 以上の事情に加え、著しく変動する国際情勢等その他諸般の事情を総合的に考慮し、主文のとおり判断する。


裁決書における土地の使用方法使用期間の記載例

土地の使用方法  日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊が使用する嘉手納飛行場の家族住宅敷地及び道路敷地として使用する。

土地の使用期間  権利取得の時期から平成34年5月31日まで

権利取得の時期  平成29年6月1日

明渡しの期限    平成29年6月1日