東山の森不動産・補償コンサルタント


マンション管理講座

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1 成年後見制度について)


2 民法(債権法)改正によるマンション管理への影響について


3 民法(相続法)改正について


4 民法(成年年齢関係)改正について



5 民法改正(配偶者居住権)につい


6 マンションの管理 1(管理費等滞納に係る法的手続きについて)


7 マンションの管理 2(内容証明郵便の作成方法)


8 マンションの管理 3(管理費等の滞納に係る取立ての手続について)


9 マンションの管理 4(管理費等の滞納の場合の「内容証明郵便」の作成方法)


10 マンションの管理 5 マンションの火災保険(共用部分と専有部分の保険について)


11 マンションの管理 6≪団地総会と棟総会の違いについて≫


12 マンションの管理 7(管理計画認定制度について)


13 マンションの管理 8(調停申立書について)


14 マンションの管理 9(住民票調査について)


15 マンションの管理 10(相続人調査)


8 マンションの管理 3
(管理費等の滞納に係る取立ての手続について)

(本講座については、東山の森不動産・補償コンサルタント-YouTubeでも扱っていますので、一度ご覧ください。)


〇 管理費等の滞納に係る取立て手続について


1 滞納の把握と督促

(1)滞納の把握
 管理費等の滞納を長期間放置しておくと、回収が困難になりますので、管理組合として、滞納の事実は速やかに把握しておかなければなりません。会計担当理事や、管理会社において、毎月確認をし、滞納が判明したら速やかに督促等を行います。

(2)文書等による督促
 標準管理規約は、「管理組合は、納付すべき金額を納付しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講ずるものとする。」としています(60条3項)。

 管理組合は、まずは滞納者に対して、滞納管理費等の支払の督促とともに、今後も滞納が継続する場合には、その状況に応じてさらなる措置を執ることになる旨を事前に警告します。

 標準管理規約解説コメント別添3の「滞納管理費等回収のための管理組合による措置に係るフローチャート」によれば、督促の手順の例として、以下のような対応を挙げています。

1ヶ月目 電話、書面(未納のお知らせ文)による連絡
2ヶ月目 電話、書面(請求書)による確認
3ヶ月目 電話、書面(催告書)
4ヶ月目 電話、書面(自宅訪問)
5ヶ月目 電話、書面(内容証明郵便(配達記録付)で督促)

(3)督促の方法に特段の制約はありません。滞納の事実を示して督促を行い、その事実を記録に残します。


2 法的手続への移行とその選択

(1)法的手続への移行の時期
 管理標準指針では、「滞納の期間が3ヶ月を超えた場合、速やかに少額訴訟等の法的手続の行使について検討を行い、滞納の期間が6ヶ月になる前対応方針を決めている」ことを望ましい対応としています。
    
(2)法的手続とは
 法的手続と一口にいっても、その内容は大きく2段階に分けられます。まず第1段は、滞納管理費等の額とその支払義務があることを公に確定し、債権者が次の強制執行ができる資格があることを明らかにする段階です(これを債務名義取得手続といいます)。その手続によって取得された債務名義(判決等)の内容にしたがって履行されない場合、今度は第2段階として、滞納組合員の財産を処分等してその代金から滞納管理費等回収することになります(これが強制執行手続です)。

(3)債務名義の取得手続
 滞納管理費等を回収するためには、裁判所等の公的機関において滞納管理費等支払義務があることを確定してもらう必要があることから、まずは次の5つのいずれかの手続きにより、債務名義を取得します。


@執行認諾文言付き公正証書
 ア 手続の概要
   当事者双方が公証役場に同行し、あらかじめなされた合意内容をもとに、公証人に作成してもらいます。

 イ 手続の特徴と選択の視点
   滞納管理費等の支払につき、任意合意ができた場合には、それを公正証書にし、滞納管理費等の支払方法等の合意に反した場合には強制執行されることを認める旨の内容(執行認諾文言といいます)を記載しておくと、改めて訴訟等をおこす必要がなく、その公正証書でもって強制執行手続に進むことができます。
 したがって、支払につき合意ができ、公証人役場に双方が同席できる場合には、この手法を選択することが考えられます。


A民事調停
  ア 手続の概要
    裁判所調停委員仲介し、当事者がお互いに譲り合って合意点を見出し、実情に即した紛争解決を図る手段です。調停が成立すると、合意内容が調停調書に記載され、調停の内容が履行されない場合には調停調書に基づき、強制執行を申立てることが可能となります。
 不成立であれば、あらためて訴訟等で最終的に解決を図ります。債務者の住所地か、合意により定めた管轄の簡易裁判所に申し立てます。

 イ 手続の特徴と選択の視点
    当事者間ではなかなか協議が調わない場合に、第三者(裁判所)仲介により支払方法等につき合意を図るものです。あくまでも話合い解決の一つですので、当事者間で協議や合意の余地がある場合にとりうる手段であって、最初から支払意思がない場合や所在不明の場合など、協議の余地等がない場合には、選択肢から除かれます。


B支払督促
  ア 手続
    債務者の住所地の簡易裁判所書記官に対し申立てをすることにより、滞納組合員の言い分を聞いたり証拠調べなどをしないで書面審査だけで、形式的な要件を満たしていれば、裁判所書記官から債務者に対して金銭債務の支払いを督促する手続きです。
 支払督促の発送から2週間以内に債務者から異議申立てがあると通常訴訟が開始しますが、異議申立てがなく2週間が経過すると債権者の申出により仮執行宣言を付する手続きがなされ、それについても債務者からの異議がなく2週間が経過すれば仮執行宣言付支払督促確定し、強制執行の申立てが可能になります。

 イ 手続の特徴と選択の視点
   支払督促は、相手方の言い分を聞かずに強制執行まで移行できる可能性がある点で、滞納管理費等のように債務の存在が明らかな場合には有力な選択肢です。
 ただし、滞納組合員が所在不明で裁判所から督促書が送達できない場合は利用できません。また、申立てをする裁判所は、債務者の住所地を管轄する裁判所であるため、滞納組合員が外部区分所有者であり遠隔地に居住している場合などは滞納組合員の住所地の裁判所まで出向かなければならないという負担が生じます。
  したがって、滞納組合員が所在不明の場合、遠隔地に居住している場合や、そもそも管理費等債務の存在につき争っている場合には、選択肢から除外することになりましょう。


C少額訴訟
 ア 手続の概要
   60万円以下の金銭債務の支払を求める訴えについて、原則1回の期日で審理判決がなされるという簡易な手続きです。債務者の住所地を管轄する簡易裁判所か、当事者間の合意により定めた管轄の簡易裁判所に、少額訴訟手続によることを明示して申し立てます。債権者1人当たり、年間10回しか使えないという回数の制限があります。
   判決では分割払いを命じることもできますし、判決に至らず、手続の中で和解が成立することによって終了することも多くあります。和解の場合には、和解調書が作成され、これも確定判決と同様の効果を持ち、債務者が和解内容に違反した場合には強制執行が可能となります。
 イ 手続の特徴と選択の視点
   訴訟は時間と費用がかかるというイメージがありますが、少額訴訟手続を利用すれば、原則1回の期日だけで、かつ、弁護士等を立てないで対応することが十分可能です。また、判決や訴訟上の和解で分割払いとなることがありますが、後述の強制執行に至らないで任意に支払ってもらうという現実的な観点からは、十分評価できる解決になります。
   ただし、滞納組合員が所在不明などで期日呼出状が送達できないときはこの手続は利用できません。また、請求額が60万円を超えるものであったり、すでに1年間で10回以上この手続を利用している場合には利用できません。
   したがって、滞納組合員が所在不明の場合や、少額訴訟手続が活用できない場合には、選択肢から除外されます。


D通常訴訟
 ア 手続の概要
   請求額が140万円以下であれば簡易裁判所それを超えれ地方裁判所に提起します。双方の主張や証拠を提出して判決を得るまでには、通常数回期日が開かれます。判決では、少額訴訟のような分割払いを命じることはできません。ただし、手続の中で分割払いを定めた和解が成立することも多くあります。

イ 手続の特徴と選択の視点
 訴えを起こされた相手方は、裁判所からの呼び出しに応じず欠席すると敗訴判決が言い渡されるので訴えに応じなければなりません。 公示送達という方法も認められていて、滞納組合員が所在不明の場合にも手続をすることができます。したがって、最も強力かつ最終的紛争解決手段といえます。少額訴訟手続が使えない場合、滞納組合員が最初から支払義務そのものを争っている場合、滞納組合員が所在不明の場合などで活用できます。
 ただし、手続や主張の方法等につきかなり専門性が要求されるため、弁護士等の専門家に代理人になってもらうことが多くなり、それなりのコストも生じます。


(注)簡易裁判所においては、法務大臣の認定を受けた司法書士を訴訟代理人とすることができる。また、簡易裁判所の許可を得て、弁護士でない者(例、管理組合理事、従業員)を訴訟代理人とすることができる(民事訴訟法第54条第1項)。



(4)滞納管理費等の回収に当たっての手続の選択の視点

 以上を踏まえ、滞納管理費等の回収に当たっては、次のように整理できます。

@当事者間で合意ができる場合
 可能であれば執行認諾文言付きの公正証書にしておきます。

A第三者が介在すれば協議・合意の余地がある場合
 調停申立てがあります。また、とりあえず少額訴訟や通常訴訟、  支払督促を申し立て、その手続きの中で(支払督促の場合には、滞納組合員からの異議により通常訴訟に移行した後)、裁判所での和解という形で解決を図ることも考えられます。

B協議の余地がない場合
ア 滞納組合員が所在不明の場合
  通常訴訟です。

イ 支払方法ではなく支払い義務そのものを争っている場合
 最初から通常訴訟を検討します。

ウ それ以外の場合
 支払督促少額訴訟または通常訴訟から選択します。
 強制執行の手間ひまを回避し、できるだけ任意での履行を求める観点からは、少額訴訟で分割払いという解決策を探ることが優先的に考えられます。
 少額訴訟が使えない場合には、コスト面も考慮し、滞納組合員が遠隔地に居住している場合を除きまずは支払督促を検討し、その上で通常訴訟を検討するということになります。


3 法的手続きの準備 〜管理組合内での手続き
 法的手続きをとる場合には、管理組合内で所要の手続きをとる必要があります。

(1)総会決議
 理事長が区分所有者のために滞納管理費等を回収するための法的手続を行う場合には、規約に特段の定めがない限り、事前に総会の決議が必要です(区分所有法26条4項)。(普通決議

 総会では、いかなる法的手続を取るのか、弁護士等を委任する場合の弁護士等の選任方法等、法的手続に要する費用(弁護士費用を含む)等を決議することとなります。また、通常訴訟や少額訴訟手続きでは、後述のように、手続きの中で裁判所から和解勧告がなされることが多いので、迅速な解決のため和解を受託するか否か等について理事会に一任する旨の決議を得ておくことも考えられます。

(2)理事会決議〜規約に特段の定めがある場合
 あらかじめ管理規約において、「理事長が、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる」旨を定めていれば(標準管理規約60条3項参照)、総会決議を得ることなく、理事会の決議によって、滞納管理費等回収のための法的手続きを行うことができます。